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妹は庶子、文句があるか?常識なんてぶっ飛ばせ!  作者: 青空一夏


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33/34

33 回復

 ──しばらくして、母上がゆっくりと目を開けた。

 俺に向かって、かすかに微笑みを浮かべる。


「……夢の中で、不思議な香りがしたの。あれは……薬だったのかしら?」

「はい、フェレナ草とセリファ草を使いました。症状を見て、必要な薬草を判断したんです。……実は俺、前世の記憶があるんです。医学の世界にいたことがあって。今の状況を“どう処置すれば助かるか”という判断には、その知識が役立ちました。大切な家族――母上を助けたかったんです」


 そう言いながら、俺は母上の目をまっすぐ見つめた。

 その命を守れたことが、今は何よりも誇らしかった。

 だが、気がかりはまだ消えない。


「ですが――気になるのは、なぜあのような中毒症状が出たのかということ。

 母上は最近、なにか変わったものを口にされていませんか?」


 その場に、わずかな沈黙が落ちる。

 やがて、控えていた若い侍女がおずおずと口を開いた。


「……あの、もし……もしいつもと違うものを召し上がったとすれば、私のせいかと……思います」

 場の空気がぴんと張り詰める。


「公爵夫人が召し上がったスープ、実は私が……あの日、体調が優れないと伺いまして。薬草を少し足して煮込んだのです。良かれと思って……。でも、私……無知だったのだと思います……」


 震える声に、母上が小さく息をのむ。

 俺は歩み寄って問いかける。


「その薬草、まだ残っているか?」

「は、はい。厨房に……」

「案内してくれ」


 ◆◇◆


「……やはり、これか」

 俺は侍女が使用したという薬草を手に取り、葉の縁に指を滑らせながらつぶやく。

「これは〈グロワ草〉。〈ミラト草〉とよく似た形をしていて、若葉の時期には特に見分けがつきにくい」

「……それって……毒なんですか……?」

「あぁ。神経毒を含んでいる。高熱や幻覚症状が出るし、母上のように死にかけることもある。おそらく君は疲労回復効果のある〈ミラト草〉と間違えて摘んだんだろう?」


 侍女が床に膝をつき、唇を震わせながら頭を垂れる。

「処罰は……覚悟しております……」


 その言葉に、母上が静かに頭を振った。

「いいえ。あなたは、私のために動いてくれただけ。その気持ちが、何より嬉しいわ。……私を思っての行動なら、責められないわよ」


 俺も、重々しく頷く。

「この件でわかったのは、“知らないままの善意”が命を危うくすることもあるということだ。これからは正しい知識を学び、同じことを繰り返さないように。それと、独断で判断しない慎重さも、忘れるな」


 侍女の震える肩を、母上はやさしく見つめる。そして、ふとその視線が――アメリアへと移る。


 俺は母上のためにアメリアも山岳地帯へ赴き、薬草を採取したことを伝えた。母上の微笑みが、ゆっくりとやさしく深まる。

「まぁ、アメリアも一緒に薬草を採りに行ってくれたの? 危険なところなのでしょう? 私はあなたの実の母親じゃないのよ? そこまでしなくて良かったのに……おばかさんね」


「……だって、私、公爵夫人のこと、ずっと尊敬していました。私のような立場の者にも優しくしてくださって……だから、どうしても元気になってほしかったんです」

「そう……。なら、これからは私のことを“お母様”と呼んでちょうだい。あなたは、もう私の実の娘同然よ。ねえ、レオニル?」


「もちろんです。アメリアは母上にどんどん似てきていますからね。お二人が並んでいると、所作がそっくりで驚きますよ」

「あの……実は、私、公爵夫人……じゃなくて、お母様のことを真似していました。こっそり観察して、仕草や話し方を……ごめんなさい」


「まあ、なんて可愛らしいの。いいのよ、大歓迎だわ。淑女としての教育は私に任せて。お揃いのドレスも仕立てましょう。まだ先だけど、デビュタントが楽しみだわ」

 その声は明るく、まるで何事もなかったかのように、部屋には華やいだ空気と笑い声が戻ってきた。








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