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妹は庶子、文句があるか?常識なんてぶっ飛ばせ!  作者: 青空一夏


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20/34

20 兄妹デート-2

 アメリアが嬉しそうに屋台の菓子を頬ばるのを眺めながら、俺はその表情を胸に刻み込んでいた。

 妹の笑顔ってのは、どうしてこんなにも心を満たしてくれるんだろうな。


 ふと、通りの向こうから音楽と歓声が聞こえてきた。人だかりができている。広場のようになった一角で、大道芸人たちが簡易な舞台をつくり、観客を沸かせていた。

「……見ていくか?」

 俺がそう尋ねるよりも早く、アメリアの目が輝いた。

「はいっ!」

 俺の手を引いて歩き出すアメリアに、ピコルが慌てて後を追う。マリーは一歩下がってついてきているが、彼女も楽しそうだ。


 人垣の隙間を縫うようにして近づくと、ちょうど演目が切り替わるところだった。現れたのは、派手なマントを翻した男――魔道芸人か。片手に細長い杖のような道具を持っていた。

「さあ、お嬢さん、お坊ちゃん、注目してくださいよ~! 本日限り、空を舞う“火の鳥”の登場だ!」


 おどけた声とともに、芸人が空中に魔法陣を描く。その中心から、炎で象られた鳥の幻影が――まるで命を持つかのように、羽ばたきながら飛び出した。

「わぁ……!」

 アメリアの感嘆の声が、ひときわ可愛く、楽しげに響く。目を見開いて、炎の鳥を追いかけるように首を動かす。ピコルまで「にゃっ」と鳴いて、飛び上がりそうになっていた。


「さすがに本物じゃありませんよ~。触っても火傷はしません。ご安心くださいねぇ」

 芸人がそう言ってみせると、何人かの子どもたちが手を伸ばした。

 火の鳥はくるりと宙返りしながら、最後にはパッと小さく弾けて消える。

「ふふっ……素敵」

 俺の隣でアメリアが笑った。


 ――火の鳥が空中で消えたあと、ひとりの女が舞台の前へ出てきた。

 紫のスカーフを頭に巻き、金の鈴のついた杖を手にしていた。いかにも胡散臭い“占い師”だった。

「さあさあ、次は占いの時間ですよ~! そこの可愛いお嬢さん、あなたには、きっと素敵な運命が待ち受けている!」


 指を向けられたアメリアが、ぱちくりと瞬きをする。

「わ、私ですか?」

「あなた以外に、誰がいるっていうのよ!」

 占い師がどこからか水晶玉を取り出し、勝手に呪文のようなものをぶつぶつ唱え始めた。


 俺は苦笑して見守っていたが、次の言葉で一瞬、動きを止めた。

「おやおや……これはこれは……すごいわよ? 三年後、あなたの前に現れるのは、紺碧の瞳を持つ高貴な青年。優しくて、誠実で、あなたを誰より大切にしてくれる運命の人……!」


 アメリアの顔が、みるみる赤く染まっていく。

「えっ……そ、そんな……っ、わたし……」

「ふふふふ、まだちらりとも見かけてもいないわよ。でもね、その出会いが、人生を変えるの。まるで、おとぎ話みたいな恋が、始まるのよ~~!」

 占い師の芝居がかった口調に、まわりの観客まで「おお~」と盛り上がり出す。

 

 だが、俺は少しも笑えなかった。

「……くだらんな」

 腕を組んだまま、アメリアの肩越しにじろりと占い師を睨む。

 空気が一瞬、ピシリと凍った。――どうやら無意識に俺の氷魔法が漏れていたらしい。


「三年後? ふっ……その前に、俺がその男を氷漬けにしてやろうか?」

 アメリアがビクッと肩をすくめる。

「お、お兄ちゃん、冗談ですよね!? ね!?」

「ああ、もちろん。冗談さ」

 にっこりと笑って見せたが――言うまでもなく、冗談ではない。


 アメリアを大事にする高貴な青年とやら?

 簡単に妹が手に入ると思うなよ。

 俺はまだ見ぬ未来の“敵”に、静かに闘志を燃やしていた。


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