19 兄妹デート-1
――午後三時。学園の放課後。オルディアーク兄妹、街へ。
王都の中心部からやや外れた通り沿いには、夕刻の市へと足を運ぶ買い物客をあてにした小さな露店が軒を連ねていた。
露店の屋根は可愛らしい花の形をしており、香ばしい焼き菓子の匂いがあたりに漂う。軽やかな鐘の音と笑い声。やわらかく心地よい風が吹き抜け、街全体が穏やかな空気に包まれている。
「わぁ……! お兄ちゃん、見てください、あれ!」
アメリアが指差したのは、色とりどりの飴細工を並べた小さな屋台だった。透明な水飴に淡い花びらが閉じ込められていて、陽にかざすとゆらゆら光をはじく。
「これは……『花びらの蜜飴』だそうです。食べたことないです!」
アメリアは目を輝かせ、屋台に駆け寄る。
俺は苦笑しながら、アメリアの後をゆっくりと追った。そのすぐ後ろでは、ふわふわの小さな翼を生やした猫――ピコルが、跳ねるように楽しげに駆けていく。見上げれば、頭上にはルーンがふわりと舞いながら、俺たちを静かに見守っていた。
「他にもあるみたいです! これ……ふわふわのパン? シフォンみたい!」
隣りの屋台では、ちぎると湯気がふわりと立ち上るような軽い菓子パンが並んでいた。
アメリアが驚きと喜びを隠せずにきょろきょろしているのを見て、俺はすっと前に出て、言った。
「全部、一つずつください」
「お兄ちゃんっ!? そ、そんなにたくさん――」
「食べきれなかったら、ピコルにあげればいい。マリーも食べたいだろう? ルーンは果物が好きだから、食べなさそうだが」
そう言うと、マリーがにっこりと笑いながら頷いた。
「では、ありがたく頂戴します。お嬢様、どれから召し上がります?」
「ん~~! どれも可愛くて迷っちゃう……!」
アメリアは嬉しそうに手を伸ばし、まずは蜜飴をひと舐め。その甘さに目を丸くし、次にふわふわパンをちぎって口に入れた。
「ん~~~~っ、おいしいぃ!」
「にゃっ、ちょうだいにゃ」
ピコルが足元でねだると、アメリアはちぎったパンをそっと差し出す。
みんなで食べながら楽しそうに笑い合う様子に、俺は満足げに頷く。
頬を膨らませてお菓子を頬張る妹の姿には、つい目を細めた。
――……ふふ。かわいいな。連れて来た甲斐があったよ。
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兄妹デート3まであります。




