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妹は庶子、文句があるか?常識なんてぶっ飛ばせ!  作者: 青空一夏


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13 ピコル登場 

 ヴァルレイン伯爵夫妻と令嬢カリサは、よろめくようにしてフロアを後にした。たぶん、そもそもこの階の席じゃなかったんだろう。

「さ、アメリア。気を取り直して、外の景色でも楽しもう。マリーたち、持ってきた食べ物を広げてくれ」


 だが、アメリアは手を伸ばそうとしなかった。

「お兄ちゃん……学園に戻りたい気持ちはあります。でも、まだ怖いの。だって……引き出しが水魔法で濡らされたり、筆箱の中身が移転魔法で消されたり……誰も、私に声をかけてくれなかったり……」


 どこの世界でも、子ども同士のやることって似てるんだな。前世でも上履きを隠されたとか、教科書を隠されたって子がいたっけ。まあ、俺自身がやられたことはなかったけど。

「水魔法、ね。……大丈夫だ。もしまた同じようなことをする奴がいたら、泣いて反省する羽目になるさ。お兄ちゃんが守る。安心していい」

 とは言ったものの、教室は近くても寮は男女別だ。四六時中そばにいてやれるわけじゃない。


「そんな顔するな。ちゃんと考えてる。――この子が、アメリアを守ってくれる」

 俺は魔力を練り上げ、手をかざした。

「我が魔力にて形を与えし守護の獣よ。翼を持ち、風を裂き、アメリアを守れ……汝の名は、ピコル!」

 ふわふわのシルバーグレーの毛並み、純白の翼には銀のグラデーションが走る、美しい猫が現れた。

「わっ、可愛い……! お兄ちゃん、触ってもいいですか?」

「もちろん。今日からアメリアの守り手だ。俺が創った使い魔だよ。話せるし、ちょっとした“お仕置き魔法”も使えるようにした。俺とも精神交信できるしな」

「ほんとに? なんてふわふわの毛並みなんでしょう……!」

「それから、アメリアの感情を検知して俺とリンクするようにしておいてもいいな。アメリアが涙を流したら、俺の移転魔法が自動で発動する」

 そのとき、母上が小さく苦笑した。

「あらまぁ、万全の守りね」


「――あっ、ピコルがいなくなっちゃった……?」

「あぁ、ピコルは姿を消せるんだ。ほら、あそこ。船長が母上に挨拶に来ようとしてるだろ? この船、ペットの持ち込み禁止だから、自分で察して姿を消したんだと思うよ」


 ちょうどそのとき、船長が最敬礼で母上と俺に頭を下げに来た。母上はゆったりとした笑みを浮かべながら声をかける。

「とても気持ちのいい船ですね。また利用させてもらいますわ。……そうだ、ご紹介しておきます。こちらが私の娘、アメリアですの。もちろん実の娘ではありませんが、とても気の利く優しい子でして。……不思議とね、気がつけば本当の娘のように思えてしまうのですわ。特に、この子を見下す者に出会うと――なおさら、ね。庶子で生まれたことは、この子の罪ではありませんわ」

「仰る通りでございます。さすがは叡智にあふれるオルディアーク公爵夫人。……アメリア様、私はこの遊覧船の船長、オリバーと申します。以後、お見知りおきを。このひとときが心に残るものでありますように」


 にこやかに頭を下げる船長に、俺も軽く返す。

「よく手入れされたいい船だ。君の仕事ぶりがよく出てるな」

 少し気の利いたことを言っただけのつもりだったが、オリバーは目を輝かせて喜んでいた。


 アメリアはというと、船長に声をかけられたことが本当に嬉しかったらしい。

「お兄ちゃん……船長さんが、私に優しく話しかけてくれるなんて……すごい、嬉しい……!」

「良かったな。でもアメリアは、オルディアーク公爵家の令嬢だぞ。声をかけられるのは当然だし、基本的には《《こちらから》》声をかける立場だ。……今日は、船長が気を利かせてくれただけさ」

「はい! 私、お兄ちゃんと学園に通えるのが楽しみです!」

「俺も楽しみだ。とにかく任せとけ。絶対に、楽しい学園生活にしてやるからな」


 すると、母上が急にぽつりと言い出した。

「……楽しそうね、学園生活。私も混ざりたいわ~……あら、そうだわ。魔法で年齢を戻して、アメリアと同じ歳になって入学すればいいのよ!」

「……母上、それ“アメリアを見守りたい”んじゃなくて、“もう一度学園で青春したい”だけでは……?」

「失礼ね。私は純粋にアメリアの交友関係が気になるだけですよ。制服のデザインも悪くないし……今風で洗練されてますでしょ?」

「えっ……オ、オルディアーク公爵夫人!? ま、まさか本気ですか!?」

「却下ですよ。母上まで寄宿舎に入ったら、オルディアーク公爵家の采配と領地管理はどうするつもりですか?」

「まぁまぁ、我が家には家令と、執事が三人いますし? 領地経営も王都から指示できますわ。移転魔法もあるし、通学だって可能ですわよ」


 本気で言ってるんだとしたら、ちょっと恐ろしい。


 ……母上は、これまで少しずつ俺たちに関わってくれるようにはなっていた。

 しかし、ヴァルレイン伯爵令嬢の一件を境に、その距離感が一気に縮まった。

 まさか「一緒に学園へ行きたい」なんて言い出す日が来るとは、思いもしなかった。


 共通の敵がいると団結力が生まれるのは、前世でもこっちでも変わらないのかもしれないな。

 だとしたら――少しだけ、ヴァルレイン伯爵令嬢に感謝……してもいいのかもしれない。スパルタン学園は噂通り厳しいが、教育そのものは悪くない。むしろ、筋の通った方針だと思う。だからこそ、あの令嬢も少しは鍛え直されるだろう。

 

 だが、だからといってアメリアをあそこに放り込もうなんて、これっぽっちも思わないけどな。大事な妹を、そんなスパルタン学園の洗礼に晒す気なんて、あるわけないだろ?


 それにしても妹との学園生活、実に楽しみだ!




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