第十五話 いま
それから――歳月は、容赦なく過ぎた。
気が付けば、俺は十六歳になっていた。
あの焼け跡を見てから、十年近く。
子供だった頃の感情は、今も胸の奥に沈んでいる。
でも立ち止まってばかりはいられない。だから、俺はひたすら"創って、考えて、修正して"きた。
魔法も同じだ。
火属性魔法は、自分なりに体系化した。
初級から上級まで――炎の大きさや制御、燃焼式の変化。
我ながら、なかなか理論的に整理できたと思う。
水魔法? ……うん、まあ、うん。
成長しても、放尿とは仲良しのままだった。
人生とは、乗り越えられない壁もあるということだ。現実は厳しい。
治癒魔法とかはパブレに叩き込まれた。
基礎は完璧。応用は……パブレが横で「うんうん」と頷くくらいには覚えたらしい。
そして、商会と共同でストーヴの安全改良も進めた。
――あの日から、ずっと。
安全魔力石の仕組みを組み込み、過熱警戒印を付与。
さらに"火は水で鎮火できる"と公式に告知してもらった。
依頼して広めた安全講習も功を奏し、幸いあれ以来、大事故は起きていない。
他にも、前世の知識を色々と引っ張り出して作った。
・食品加温板(簡易火力調整式)
・風呂を沸かす温水循環器
・保温ポット魔道具
・冬季用携帯暖房石
便利なものが増えるたび、世界が少しだけ明るくなる。
それを見るたび、俺はほんの少しだけ、救われる気がした。
◇
フィアナは相変わらずだ。
明るくて、温かくて、俺が沈んだとき、なんとなく隣にいてくれる。
母であり、救いであり、ずっと俺を見守ってくれる人。
ママ友界の帝王の座は堅いらしく、何かと忙しそうだが、笑っている彼女を見ると安心する。
アリスは十六歳。
リオン魔法学院に入学したらしく、最近はほとんど顔を見ていない。
昔みたいに「フレア、ペン取って」なんて言ってこない。
けど、きっとどこかでまた会うんだろうなって気はしている。
そして――パブレ。
去年、意を決してフィアナに告白した。
俺は本人から相談されて、全力で応援した。
結果?
――軽く、爽やかに散った。
「私、フレアが大事だから、そういうのは違うでしょ?」
ってフィアナが、いつも通り笑顔で言ったらしい。
その夜のパブレは、人生の終わりみたいな顔してた。
でも結局、今も家に来て指導してくれる。
「俺は……男だから、こんなことでクヨクヨしないから……」
とか言いながら。
なんだかんだで、優しい人だ。
――みんな、優しくて、良い世界だ。
本当にそう思う。




