007
次に向かった場所は、田畑が広がる場所。
住宅もあまりなくて、田んぼが広がっていた。
のどかな風景が、レモフィラらしい穏やかな景色だ。
ただ、それでも空は真っ黒な雲が立ち込めていた。
田んぼのあぜ道を、僕ら三人は歩く。
時刻的には、昼頃というのだろうか。
「自警団の中でも、目撃例が多いのがこの田園地区ですね。
18件中11件が、このあたりで確認されています」
「本当に広いわね。どこまでも水の世界」
「季節的にも、田んぼに水が張っていますから」
水田が、いくつも見えた。
水も張っていて、稲が植えられていた。
昼間だから、働いている人間もちらほらと見えた。
「この辺の土地は?」
「レモフィラは、水路が完備されていて田んぼが多いです。
畑で野菜も取れますし、米も野菜も名産です」
「確かに、そんな感じだね。
このあたりの土地も、あの村長が持っていたものなの」
「昔はそうでしたけど、今は各人の農家が管理しています」
ルメーノが、淡々と言っていた。
「もしかして、あんた農家の娘だったりする?」
「え、え、そう、見えますか?」
「なんとなく、声が心なしか嬉しそうに聞こえたから」
イグアスの指摘に、黒フードのルメーノは下を向いた。
「はい、私は農家の出身です。
でも魔法の才能が有ったので、自警団に幼なじみに誘われて」
「幼なじみは、昨日の剣士さんとか?」
「そ、そうですよ。ジムジムやブラウンです」
聞いてもいないのに、名前まで言ってきたルメーノ。
二人とも幼馴染で、仲がいいことを彼女が教えてくれた。
「まあ、二人ともカッコいいからね」
「そ、そんなことない。私がいないと、二人は何もできないんだから」
「尻に、敷かれているわけか」
僕は、にこやかなにルメーノを見ていた。
黒フードを被ったままだけど、照れている顔が想像できた。
「ところで、ダンタリオンさん」
「なんだい?」
「あの妖精って?」
「ダンテのことかい?」
「そう。白雷の妖精ダンテ。
妖精のダンテを、私は初めて肉眼で見たのですけど」
「あれは、機械仕掛けの剣『トレノ』を守護する妖精だよ」
「トレノ?」
「伝説の英雄が使った武器。それが、僕の背中にあるこの剣なんだ」
背中に背負っていたトレノを、僕は握った。
機械仕掛けの大剣は僕が持った瞬間に、歯車がカタカタと音を立てて回り始めた。
「それがトリノ?」
「ああ、僕の父が守護してきた剣で…僕が引き継いだんだ」
僕は、難しい顔を見せていた。
ルメーノはそんな僕から、何かを悟り頭を下げた。
「なんか、ごめんなさい」
「いいのよ、あたしたちは雷神を倒すためにここにいるし」
「それに、トレノを守護するダンテは僕の相棒だ。
だからこそ、僕は絶対に雷獣を倒さないといけない」
僕はトレノを見て、刀身に反射した自分の顔を見ていた。