006
翌朝、僕らはレモフィラの町を歩いていた。
僕とイグアス。そして、道案内をするルメーノの三人だ。
ルメーノは自分の住んでいる村でもかかわらず、なぜかいつも黒いフードをかぶっていた。
村は、穏やかな景色が見えた。
のどかな光景、曇っているけどいつも通りの光景だ。
歩いているのが、村の中央通りだ。
「長閑な場所だね」
「はい、とても長閑です」
ルメーノは、地図を見ながら歩いていた。
黒フードをかぶった彼女は、レモフィラ自警団の魔法使い。
文字通り、魔法が使える職業だ。
そして、この世界では魔法使いの希少価値は高い。
「でも、田舎で魔法使いとは珍しいね。
魔法を使える人間はかなり貴重だし、帝都やほかの町にいてもおかしくないと思うけど」
「本当は、私もそうしたいです。
でも、私がいないとこの村は大変ですから」けなげに答えたルメーノ。
「わかるわ、あなたの力は特別だから。
魔法が使えるのは、それだけで他と違う。特別な人だから」
「私は、そんな風には思っていないです。
私はこの力を、ただこの故郷のためにだけ使いたいので」
「いい心がけだね」
僕とイグアスが話しかけるも、フードをかぶったまま話していたルメーノ。
少し前に歩いていたルメーノが、急に止まった。
止まった先は、大きな屋敷の前だ。
「ここが、テレーズ様のお屋敷です」
「ああ、昨日の村長ね。なんか随分と、偉そうだったけど」
「テレーズ様は、もともと帝国からきた領主でレモフィラの土地をすべて持っていました。
私たちは、テレーゼ様から土地を借りて生活をしております」
「なるほどね。それで、かなり偉そうなのね」
「つまり、大地主というところか」
「テレーゼ様の庭で3件、雷獣が現れました」
「オオカミタイプかな?」
「確かに、そんなところです」
僕の質問に、地図を見ながら答えていたルメーノ。
「あの村長、誰かに恨まれていたりしていない?」
「雷神がこの村の村民なら、十分にあり得るだろうね。
昨日も雷獣が現れているから、可能性がないこともない」
僕は、腕を組んで大きな庭を見ていた。
「屋敷の中に、入ります?」
「屋敷の庭は、ずいぶんときれいに手入れされているね。
これだけ見ただけでも、僕はでも十分かな」
戦いの跡は、ほとんど残っていない。
金持ちの村長のことだ、使用人がすぐにきれいに片づけたのだろう。
「では、次に行きましょうか」
ルメーノは、地図を見ながら次の場所へと案内していくのだった。