043
雷が降りそぐ外は、とても危険だ。
夜の空が、昼間のようにとても明るい。
だが夜が一瞬明るくなるたびに、雷に打たれて誰かが苦しんで命を失う。
赤紫の雷は、次々と町に落ちていく。
それは、死への道標のようだった。
城の正門から、大通りに抜けた僕とイグアス。
そして、機械の体をしたサザーランド。
走りながらも、降り注ぐ雷をしっかりと避けていく。
「立ち止まったら、雷に撃たれるぞ!」
「はい、ダンタリオンさん」
「……」反応するのは、機械体のサザーランド。
無言で僕のすぐ隣を走っていた、イグアス。
「サザーランド、雷は大丈夫なのか?」
「雷には多少強いですが、あの雷には強い魔力がこもっています」
「色も赤い」子供のころに見た赤紫の雷、全く同じだ。
赤みの帯びた雷は、絶望した子供のころと何も変わらない。
「雷神の魔力が、この雷に込められている。
致死量の電撃量はあるし、記憶さえ簡単に消し飛ばすこともできる」
「赤雷を飛ばすのは、雷神ママラガンですか?」
「サザーランドは、会ったことがあるのか?」
「ない……と、言いたいですが」
「既に会っている、可能性がある。そう言いたいのだろう?」
僕は、赤雷のママラガンをよく知らない。
子供のころ赤雷を、恐怖心だけで見ていた。
雷を起こす雷神の正体も、知ることができた。
「雷神は、姿を隠すことができる。
雷神は、姿を変えることができる。
だとすれば、雷神に成りすました人間がいるのも不思議ではない」
「まるで、ダンタリオンはそれを知っているかのようだね」
「わからないけど、ゴグダは雷に打たれた。
あれだけの素早さを誇るゴグダが、避けられずに簡単に雷に打たれた。
それだけで、普通ではない。
まるで、不意打ちにでもあったかのように」
小人族のゴグダの顔を、思い浮かべた。
小さな体で素早く、切り込み隊長のゴグダ。
俊敏性のある動きに加えて、勘の鋭いゴグダ。
だけど、雷鳴師一の素早さを誇るゴグダは雷に打たれた。
城の敷地から、町中央の大通りに来ていた。
多くの商店が見えて、にぎわうここは地獄だ。
倒れる兵士や、町の人。
城門をくぐった先には、大きな獣が姿を見せた。
「おしゃべりは、ここまでのようだな」
僕は右手を広げて、二人を制した。
イグアスは、すでに格闘モーションでシャドーボクシング。
サザーランドも、両手に拳銃を持って機械の黄色い目を光らせた。
それは、雷を放つ巨大なイノシシが道を挟んで待ち伏せをしていた。




