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雷の鳴る帝国  作者: 葉月 優奈
三話:姫の情報と雷の結界
31/56

031

(DANDARION‘S EYES)

森から戻った僕は、酒場に来ていた。

酒場では、黒いフードの人間が姿を見せた。

僕は彼女を案内して、近くのテーブルについていた。

ここには僕とルメーノの二人だけ。

イグアスは、先に王城に戻らせた。将軍からの話があるということらしい。

一緒に戦ったグラも、すでに別の場所に向かっていた。


黒いフードの少女ルメーノは、ここにきてそわそわしていた。

食事以外は、彼女はフードを被ったままだ。

人が多い酒場で、周りをじろじろと見ていた。


「なんか、気になるのか?」

「帝都は都会…です」

ここは帝都だ。

ルメーノが来たレモフィラより、圧倒的に人が多い。

酒場の賑わいも、レモフィラの酒場ともなればケタ違いだ。


「まあ、僕も初めに来たときはすごく驚いたけど」

目を細めて、僕は困惑するルメーノに声をかけた。


フードを被ったルメーノは、ゆっくりと脱いだ。

ポニーテールの無垢な少女は、顔は少し照れていた。

童顔の魔法使いは、上目遣いで僕を見ていた。

目の前の料理を見ると、おいしそうなのか目が輝いていた。


「おいしそう」

「いっぱい食べな」

「ありがとうございます」

ルメーノは、肉料理を食べて満足げな顔を見せた。


「うまい、本物の肉だ」

「本物?」

「レモフィラだと、肉っぽい肉を食べていたので」

ルメーノのすごい食欲に、僕らは圧倒されていた。


「それより、できたのかい」

「うん、でも私なんかで本当にいいの?」

「君の魔力は、かなり高いと素直に思った。

なにせ、あの雷神を見破った君の力だ」

「それは、ずるいです!」

ルメーノは、照れくさそうな顔を見せていた。


「でも、君の力には惹かれるものがあった」

「この針だけど」

テーブルから取り出したのは、三本の小さな針。

その針は、見た目は普通の裁縫用の針だ。

小さな針を、紙で包んで僕に渡してきた。


「ルメーノの魔力が、やはり込められている」

「縛りの魔法バインド、相手の動きを止めることができる。

だけど、効力はせいぜい十分程度」

「それだけできれば、十分だよ。すごいね、ルメーノは」

「そ……そう、ですか?」

ルメーノは、なぜか照れていた。


感心している僕と、照れているルメールのそばに注文したものが届いた。

追加の食事と、ビールとワインだ。


ルメーノは、豪快にビールを頼んだ。

僕も、赤いワインを頼んでいた。


それでも、僕は優しく語りかけた。

同時に僕は、金貨が入った麻袋をルメーノの前に置く。


「ほんの謝礼だよ」

「こんな大金、私のような…」

「錬金術の成功報酬なら、これぐらいは当然かと。

でも、本当にすごいね」

針を一本取って、僕はじっと眺めていた。


「魔法の刻印も、しっかりしている。

これならば、赤雷を見つけることもできるだろうね」

「そんなにすごいの?」

「ああ、赤雷は少し特殊な雷神だ。

何せ、赤雷は一番危険な情報の上書きができるから」

「上書き?」

「そう、上書き。赤雷は、雷に情報を与えることができる。

雷に打たれた人間の、情報を書き換えることができる。

情報の書き換えは、人の乗っ取りだ。相手の意識を上書きで操ることができる」

「それを防ぐために、魔力を消失させるのね」

「だから、本当に助かったよ」

「ねえ、それでダンタリオンは?」

「ごめん、急に呼び出しが入った。

それと、ここのお代は僕が払っとくから」

僕の目の前には、ビールと一緒にメモが置かれていた。

そのメモを、すぐさま僕はコートのポケットに入れて立ち上がった。



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