028
陸に上がった魚は、すでに終わっていた。
最後はイグアスが大きくなった足で踏みつけて、魚は絶命した。
あっけない決着で、魚の雷獣は動かなくなった。
「二人とも、お疲れ」
僕は声をかけて、機械剣トレノを大剣に戻して背中にしまった。
グラは、少しぼーっとしていたがすぐに持っていた斧をしまう。
グラも感じたのだろう。イグアスの戦い方が、とても変わってしまったことを。
「俺の大活躍だな」
「何もしていない」
魚を踏みつけて、足元が赤いイグアスがグラをじっと見ていた。
僕はイグアスが投げ捨てたコートを、彼女に手渡した。
「びっくりしたんだよ」
「確かにびっくりした」
グラの言葉に、僕も同調した。
イグアスがいきなりためらいもなく、川に飛び込んだ。
今までのイグアスなら、あり得ない行動だ。
戦い方のスタイルも、完全に変わってしまった。
腰にある拳銃を、一度も抜くことがなかったのだから。
迷いない行動に、僕の心臓の鼓動が速くなっていた。
「心配したんだぞ」
「心配?大丈夫」
「君が無事で、本当に良かった」
胸を撫でおろした僕は、イグアスを迎えた。
なぜか、イグアスは僕の頭を撫でてきた。
「こら、撫でるな」
「心配、あなた?」
「平気だよ、僕は」
イグアスは少し、不安そうな顔を見せていた。
それでも、僕は彼女に対して安心させた顔を見せていた。
「この魚も、雷で体が大きくなったんだよな?」
「そうだね。普通の魚か」
雷が打たれた魚が、縮んでいくのが見えた。
「周囲には、赤雷はいない…か」
「誰もいない」
河川敷には、僕らしかいない。
ワイヒラウ将軍の計らいで、河川敷は雷鳴師以外立ち入り禁止にしてあった。
何かの異変も、周囲には感じられない。
「何もいなし、戻るか」
河川敷から、橋の上に上がる階段が見えた。
そのまま、僕らは階段を上がってライザー大橋へと戻っていく。
河川敷から階段で上がったライザー大橋は、渋滞していた。
帝都に向かう馬車と、帝都から出ていく馬車。
入り口の検問で、足止めを食らっていた。
歩道にも、人があふれて行列が出来ていた。
「何かあったのか?」
僕はライザー大橋を歩くと、一つの馬車から声をかけられた。
「ダンタリオン」
渋滞待ちの馬車から声をかけてきたのは、黒フードの人間。
女の声を聴いた瞬間、僕はそれに反応した。
見慣れた黒フードの人物を見て、僕はその人物に近づいた。
「ルメーノ?」
それは、レモフィラにいた魔術師ルメーノが馬車に乗っていた。
「私、あなたに会いにここに来たのだから」
ルメーノは、黒フードを少しだけ開けて僕に言いきっていた。




