023
帝都ライザーは、ライザール城を中心とした巨大な街。
無論、帝国内最大の都市だ。
ライザーの北には、二つの川が流れていた。
二つの大きな川を渡るために、大きな橋が架かっていた。
それが、ライザー大橋。
黒い雲が立ち込める相変わらずの空で、僕は橋の上を来ていた。
隣には、イグアスも一緒に来ていた。
「イグアス、大丈夫か?」
「あなた、大丈夫?」
「僕は大丈夫」
「あたし、大丈夫」
「そうだね」僕は、穏やかに話をしていた。
話を合わせつつ、僕は頭の中で考えていた。
(ワイヒラウ将軍は、ここに赤雷ママラガンの雷獣がいる)
どうやらママラガンは、帝都に戻っていたという情報を聞いた。
赤い雷を帯びた雷獣が目撃されたのが、昨日。場所はライザー大橋。
前回赤雷を目撃したのは、レモフィラ。
田舎のレモフィラは、帝都ライザーから二日ほどの距離。
電車もあって5日ほどの距離を、赤雷は何らかの力で移動したのだろう。
魔法も使えるし、瞬間移動の魔法を使えても不思議ではない。
「雷獣を倒すの?」
「そう、必ず倒す」
「わかった」雷獣に対する感情は、記憶が失っても変わらない。
彼女の本能だろうか、そこはわからない。
僕は昨日、彼女を連れていくことでいろいろ教え始めた。
イグアスには、外傷もないし記憶がないだけだ。
時折変な声を上げるけど、戦闘の動きには問題なかった。
むしろ動きが、速くなったようにさえ思えた。
雷獣に対する記憶も残っているらしく、敵としての認識も残っていた。
でもワイヒラウの言っていた言葉が、僕の胸に残っていた。
『イグアスを見てあげることができるのは、お前だけだ。ダンタリオン』
ワイヒラウの言葉は、僕にとって重い。
唯一の戦友、僕はイグアスの全てを知っているのだから。
15年の旅の中で、彼女と一緒に旅をしてきた。
片時も離れたことがなかったもで、イグアスをよく理解した。
それは、愛情というより相棒に近い感情なのかもしれない。
「それにしても、今回の雷獣だけど…」
「やっときたか、二人とも」
橋の奥から一人の人間が、姿を見せていた。
背の高いグラが、コートを着崩してだるそうに歩いていた。




