012
夜の田園地帯は、街灯もないのでさらに暗い。
僕は、イグアスと二人で歩いていた。
夜になると、カエルが田んぼで鳴いていた。
僕とイグアスは、あぜ道をゆっくり歩く。
誰もいないし、民家も離れていた。
農家はかなり遠くの明かりのところから、ここに働きに来ているだろう。
しかも、田んぼの周りにあるぽつんとある家は明かりもついていない。
「あそこの家だな」
僕とイグアスはたった一か所だけ、明かりのついた家に歩いていた。
そして、彼はあぜ道から出てきた。
「こんな夜に、お散歩か?」
出てきたのは、廃墟にいた農夫のマグワ。
僕はじっと見ていた。僕の後ろで、イグアスが警戒した様子で立っていた。
「田んぼの見回りだ」
「いいや、違う。君は、これから雷獣を呼び出そうとする。
君が隠し持っているのは、魔術具の魔術針だね」
僕の言葉に、マグワは右腕にある針を隠した。
そこにいたのは昼間の、シャツ姿のマグワではない。
長袖を着ていた男は、口元に笑みを浮かべていた。
「あんた、旅の人間じゃないね」
「既にわかっているんだろ?僕らの正体……」
「雷鳴師、国の機関か」
マグワは、横に飛んで針を飛ばしてきた。
同時に、僕は機械の剣を取り出してはじき返した。
反応した剣で、僕は針の行方を見たが一本だけ僕の後ろに飛んでいく。
それでも、イグアスが反応した。
拳銃を抜いて、そのまま針を撃ち落とした。
「あたしもいるんですけど」
僕の後ろにいたイグアスは、拳銃の煙を吹いていた。




