011
食事を終えた僕は、すぐに動いていた。
手には、五本の針。ペンほどの針を、僕は回収してきた。
宿を出て、僕は歩いていた。
いつも通りのコートを着て、僕は夜の村を歩く。
田舎でもある夜のレモフィラは、とにかく静かだ。
酒場を抜けると、僕とイグアスとルメーノが出ていた。
イグアスも、ここでは水色のコートを着ていた。
「突然、どこに行くのですか?」
「これから雷獣を倒すが、その前に君に頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
ルメーノは、不思議な顔を見せた。
僕らが向かっているのは、町はずれの一つの家。
「ここって?」
「君ら自警団の拠点だよ、どうして?」
「ルメーノ、君は魔法が使えるよね」
「ええ、そうだけど……」
ルメーノは、立派な魔法使いだ。
魔法を使って、戦う能力があった。
貴重な魔法使いであることを知ったうえで、僕はあることを頼みにここに来た。
「だから、君に頼みたいことがある」
「その話だと、単なるお使い関係じゃないですよね?」
「無論、魔法関係よ」
イグアスも、僕のやろうとしていることが理解できた。
だからこそ、僕ははっきりさせたかった。
「どうやら、ここには青雷がいる。
逆に言えば、赤雷はここにはいないだろう」
「それって、雷神ですか?」
「そう、雷神だ。
これから僕らは、青雷を倒しに行く。
それと同時に、追いかけているものがいるんだ。
『赤雷のママラガン』という。僕らは、これを探している」
「それとこの針が、どう関係するのですか?」
「君は、『封鎖魔法』を使えるかな?」
僕の言葉にルメーノは、少し考えて答えた。
「まあ、本で読んだ程度なら」
「何よりもこの針は、強力な魔力を放つ魔力具だ」
僕の言葉に、ルメーノは針を手にして驚いていた。
魔力具は、魔力を込めた道具だ。
これを媒体にして、雷神は魔力を発動させることができた。
雷神は言ってしまえば、召喚魔法だ。
雷を落として、獣に魔力を与える。それが雷獣の成り立ちだ。
「魔力具で、君に封鎖魔法を込めて欲しい。
なるべく強烈な魔法を、頼むよ」
「ダンタリオンさん。そんなことを言われたら、断れないでしょ」
ルメーノは僕の頼みを、少し照れた様子で聞いてくれた。
そのまま、僕から五本の針を受け取っていた。
「それじゃあ、僕らは行くから。
これから雷神を倒しに……ね」
僕とイグアスは、ルメーノを送ってそのまま背を向けていた。
「絶対に倒してくださいよ、雷神を」
「ああ、任せなさいよ!」
胸をどんと叩くイグアスは、ルメーノに手を振り返した。
僕もにこやかな顔から、すぐに険しい顔に変わっていた。
そのまま、僕らは二人夜の闇へと消えていった。




