001
(LUMENO‘S EYES)
今日も空は真っ暗だ。
夜でもないのに、黒い雲が空全体に不気味に立ち込めていた。
だけど、雨は全く降っていない。
空は、雨が降りそうで降らない世界。
黒い雲が、空を完全に支配していた。
この世界は、常にそういう姿だ。
いつも曇っていて、どんよりとした空の下。
強い風も吹き荒れた嵐の中で、四つ足の獣が剣士と向き合う。
後ろには、黒いフードの魔法使いも杖を持って見守っていた。
「なんて強さだ!」
周りには倒れた仲間が、何人も屍として見えた。
電気を全身に放つ四つ足の獣は、凶暴なオオカミの顔をしていた。
特別大きくないオオカミけど、眼は赤く強い威圧感を放つ。
電気のようなものを纏った四つ足の獣は、唸り声をあげて体を低く構えていた。
向き合っているのは、二人組。
一人は剣を盛った茶髪の男性。
皮の鎧を着ていて片手剣を握り、少年のような風貌だ。
もう一人は、茶色の帽子をかぶった男性。
鎧ではなく青の服を着た、男性。
槍を持った男も、剣を持った男もかなり若い男性だ。
「だが、それでも……」
「ここで引くわけには、いかない!
俺たちのレモフィラを、守るために」
二人の若い男が、威勢のいい声とともに武器を構えた。
動物の皮で作られた鎧を着こむ若い二人組は、手に権を握り立ち向かう。
それでも四つ足の獣は、赤い目で威嚇をした。
バチバチと体に電撃をまとわせた獣は、今にも飛び掛かりそうだ。
茶髪の剣士が、切りかかっていく。
槍を持った若い男も、追従して向かっていく。
同時に後ろにいた黒フードとローブの魔法使いは、杖を掲げた。
「炎の力よ、かのものに力を!」
杖先から炎が出来上がり、炎の球が二人の走り出す剣士に飛んでいく。
持っていた剣に、炎の渦を纏わせた。
剣が赤く燃えたまま若い剣士が、勢いよく切りかかった。
「消えろ、雷獣!」
叫びながら切りつけた炎をまとった剣が、雷獣の首元を捉えた。
だけど、その雷獣の首元から電撃が流れた。
雷をまとった獣は、全身の毛を逆立たせて電撃を放つ。
白い光が、電気となってバチバチ大きな音がした。
「うわあっ!」
電気が、剣を伝って剣士の体に流れ込んだ。
「これ以上、お前に好きにさせたりしない!」
必死に電撃を耐えていた、剣士の男。
剣士の剣を持つ両手の力が徐々に抜けて、そのまま剣を手放した。
首を切ろうと立てた剣が、地面に落ちた。
電撃が流れ込んだ剣士は、その場に倒れた。
「くそっ、ジムジムッ!」
倒れた剣士を横目で槍の男は、ひるまずに雷獣に向かって槍を突き立てた。
顔をめがけて突き立てる槍、それでも槍先が獣の前で止まった。
雷の獣は、全く動かない。
電撃が、槍先の侵入を阻む。
その電撃は、やはり音の体に流れこんできた。
強い電流で、攻撃を阻んでいく。
槍を持つ力が抜けた男もまたが抜けて、意識が抜けて力なく倒れた。
「嘘だ」最後に、槍使いの男がつぶやきながら意識を失っていた。
「二人とも…そんな」
魔法使いのが黒フード越しに、女の嘆く声が聞こえた。
力なくうなだれる魔法使いに対し、迫る雷獣。
電撃を放ちながら、ゆっくりと魔法使いに近づいてきた。