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短編『かんべんしてくれ!東屋さん!』

作者: 森岡幸一郎


東屋 真綾(アズマヤ マアヤ)」は些細な事で親と喧嘩し、深夜、公園のブランコという定番中の定番な場所で項垂れていた。


そこへ一人の青年が現れる。


青年は少女の思春期特有の悩みを真摯になって聞いてやり、時に涙し、時に激怒し、短いながらもこれまでの半生を通して培ってきた、哲学や美学なんかを交えてこの少女を励ました。


青年はとてもとてもとても熱く語っていたが、それは青年がへべれけに酔っていたからであった。


だが少女はそうとは知らず、こともあろうにこの酔っ払いに、惚れてしまったのである。



しかし惚れた青年は酔っぱらいどころではなかった。


高橋 貴司(タカハシ タカシ)」関東出身。21歳。オタクメガネ。


都内の大学に通う、留年の危機に瀕した大学3回生であり、彼女いない歴=年齢のDTで、自分を、


「陰キャを超えた、より上位の存在である(あん)キャ」


と称するほど、卑屈で、嫌味で、皮肉屋で、他人を一切信用しない、どうしようもない人間であった。


そんな男が、無垢なる少女の純情を正面から受け止められる筈もなく、


「これは美人局(つつもたせ)か⁉はたまた宗教の勧誘か!ええいええい寄るでない!俺は明日食う飯にも困る貧乏学生だぞ!」


と追い返す始末。


それでもある時、少女が心から高橋を好いている事、酔っていたとは言えあの時かけられた言葉に救われた事を伝え、なんとかお付き合いすることに相成った。

 

だがしかし駄菓子。


高橋貴司という男は一筋縄ではいかなかった。


今度はすぐに、


「袖にされるのが怖い」


と泣き出し、


「証拠がないと不安だぁ。この俺が捨てられないという保証がどこにある。見ろ!このザマを!愛の保証書をくれぇぇぇ」


と数少ない友人に泣きつく始末。



ところが「東屋真綾」という女。


「高橋貴司」に負けず劣らずのブっ飛び具合であった。


上記の話を盗聴した彼女は「東屋 遊馬(アズマヤ アスマ)」という、これまたブっ飛んだ兄にこの事を相談し、二人で世にも恐ろしい計画を実行するのだった。


その名も「吊り橋効果電撃大作戦」


タカシには極秘裏に、東屋兄妹による自作自演の恐怖体験(通称:愛の試練)をマアヤと共に体験させ、両名の間に絶対的な絆を形成することにより、強制的に愛の保証書を作りあげようというものである。



本作戦が決行されてからというもの、タカシに安息は訪れなかった。


作戦開始初期の頃は、アスマが運転する乗用車や大型バス、モンスタートラックの前にマアヤがわざと飛び出したり、アスマが手引きする銀行強盗や猟奇殺人鬼、過激派テロリストの人質になるなど生易しい(?)ものであったのだが、今では、ヤクザとマフィアの抗争に横やりを入れたり、世界征服を目指す悪の秘密結社の陰謀に首を突っ込んだり、世界の命運を左右するような古代文明の秘宝を横からブン捕って、わざと機関に狙われたりと、最早一介の男子大学生の手に負えない様な事態になっており、今ではタカシも、「黒い死神」の異名で国際的に裏社会からマークされている。



「きゃあ!助けてタカシさーん」


「高橋君!うちの妹が宇宙大元帥に誘拐された!何とか助けてやってくれ!」


「もう、かんべんしてくれ!東屋さん!」



2020.09/29執筆

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