僕は普通の王子です
初投稿です。よろしくおねがいします。
最近・・・というかここ三年程だろうか。近隣諸国が色々と慌ただしい。慌ただしいというか、はっきりと言ってしまえば他国の王族達が醜聞を重ねている。
始まりは三年前。自国の西側に面する国の王太子が通っていた学園の卒業式後に開かれたパーティーで当時婚約者だった一学年下の侯爵令嬢をエスコートもせず、大声で呼び出した挙げ句、浮気相手の令嬢を伴ってやってもないことを連ねて侯爵令嬢を悪者に仕立て上げ、婚約破棄を突きつけ罵倒した事件が起こった。
身に覚えのない令嬢は王太子があげた嫌がらせ等についてその場で弁明をしようとしたそうだが全く取り合ってもらえず、国王の許可もなく勝手に令嬢の国外追放を言い渡したそうだ。
当然、大問題に発展し王太子は廃太子となり、浮気相手の令嬢は修道院へ入った。
令嬢を溺愛していた侯爵家は公衆の面前で貶められたことに対してかなり立腹し、親戚の伝を頼り爵位を半ば無理矢理返上した上で国をでた。
まあ、非がなくてもそんな騒動になってしまってはあの国ではもう幸せになることは出来ないだろう。
そんな婚約破棄騒動から一年後、南の国で立太子を控えた第一王子が同じ学園に通っている令嬢に粉をかけやんわりと拒否する令嬢にしつこく迫った挙句、婚約間近だった令嬢の想い人に自信満々に決闘を仕掛けボロ負けしたらしい。
ここまでなら若気の至りで済ませられたかもしれない。王家の面子としてはかなり苦しいけど。
問題はその後。しばらく謹慎で大人しくしていた王子だったが、謹慎が解けると学園から帰宅しようとしていた令嬢を王家の紋章入りの馬車で拐い既成事実を作ろうとした。令嬢は未遂で救出されたそうだが、校舎内の出来事で目撃者が大勢いた。
その学園の生徒は全員が貴族の子息、令嬢であり彼らを通し親である貴族達の耳に入り大問題になった。
王家はこの事件を第一王子の独断であるとして、醜聞に醜聞を重ねた第一王子は王位継承権剥奪の上、幽閉となった。
最終的に継承権を剥奪され幽閉されたとはいえ、王族に対する不信感からこの事件で貴族と王家の間に溝ができたが、他国の王子である僕がどうこう言う問題じゃないかな。
恋愛で身を滅ぼすなんて出来事が二年続けて起こるなんてある意味平和だなと思った。
ここまで醜聞続きだったが、慶事もあって、令嬢の誘拐事件から約半年後に海を挟んだ向かい側にある貿易が活発な友好国の王太子が結婚した。
わりと彼とは仲が良く交流も続いているが彼の国は大国と呼んで差し支えがない程広く、富んでいる。それ故か一見穏やかに見えるが彼の腹の中は底が知れない程黒い。気がする。敵にはなりたくない。
彼の結婚は一見政略結婚だが、実は彼がせっせと外堀を埋めに埋めて結婚を誘導していたことは知っている。怖い。
まあ、腹は真っ黒で若干怖いけど、愛し合っていて幸せそうなので相手が本性に気づかなければ問題ないだろう。
それから僕は細々とした執務や勉強をこなし穏やかな日々を送った。自国は大した特徴はなく大きくもないが大地は割と豊かで農業に力を入れている。
目立つ国ではないけど恵まれた国ではあるこの国が僕は大好きだし、将来は国王である父からこの国を引き継ぐから他国の王家の醜聞は自分の胸の内に教訓として刻み気を引き締め過ごした。
そんなふうに過ごしていたら去年の今頃、東側に面する国でクーデターが起こった。元々東の国の王族はなんというか派手好きというか、全部の指に大粒の石のはまった指輪をするような人達なのだ。一家揃って。いつかこうなると思っていた。
このときはこちらに飛び火しないように国境付近の守りを固めて静観していた。
あっという間にクーデターは成功して元の国王と王妃、王太子と三人の王女は処刑され、クーデターの首謀者である聖騎士団の団長が王位についた。
しばらくして、あのクーデターは国王がたいそう美しい愛人を囲っていたが、その扱いはひどく、それに懸想した聖騎士団の団長が憤慨し事を起こした。と噂が耳に入った。
それを聞いたとき、なんとも言えない顔になった。
正直に言うと、終わってるなと思った。
隣同士ではあるものの元々東の国との付き合いは多くはなかったがさらに少なくなり、東の国との国境付近の守りを強化することになった。ちょっと何をするかわからない所と近所付き合いはしたくないよね。警戒もするよね。うん。
たった三年の間に王家の醜聞が三件も。年に一回醜聞が起こるってお祭りかな?ちょっと勘弁してほしいな。三件とも女性絡みなのもなんとも言えない。
僕はそうならないように再度胸の内に刻んだ。
僕にも婚約者はいる。長く美しいブルーグレーの髪に少しつり上がった澄んだセルリアンブルーの瞳。スラリとした手足に腰も細いのに胸がないわけでもない。美しい人だと思う。
婚約してそれほど長くはないが、彼女は妃教育に真剣に取り組んでくれているし、気立てもいい。
そもそも僕の婚約者選びは貴族間のパワーバランスを崩さない為に引き延ばされていた。彼女には素地があったとはいえ妃教育は詰め込みになっている。それでも頑張ってくれている彼女はとても好ましいし、彼女となら将来共に立ち国を守ることも穏やかに愛を育むこともできるだろう。
三年前、辺境伯の親戚を頼って彼女がこの国に来たときはボロボロだったはずなのに、それでも気丈に振る舞っていた。多分一目惚れ、だと思う。
まあ、それまでの経緯を知っていたから、最終学年で編入してきた彼女を自国の王子として気にかけ交流する程度だったんだが、それでも段々と明るくなっていく彼女を見ているうちに思いが募っていって・・・。
ちょっと魔が差した。
結婚した友好国の王太子へ好きな令嬢を政略結婚に持ち込むにはどうすればいいかということを婉曲に、婉曲に表現して手紙をしたためた。
返信の内容は大変役に立ちました!
周りにわからなくとも少し強引に婚約を結んだ自覚があったため、他国の醜聞を思い出し、同じにならないようにと自分を戒める。
「どうかなさいましたか?」
彼女の息抜きを兼ねてお茶に誘ったのに、彼女を見たら物思いに耽ってしまった。
「いや、あなたが婚約者で幸せ者だと思っていた。苦労をかけるがよろしく頼む」
何かに特別秀でているわけじゃない。心の中での一人称は僕のままだし彼女の前ではしっかりした所を見せたいと思うちょっと地位の高いだけの普通の男だろう。
「私、こちらに来る前はとても悔しい気持ちでいっぱいでしたわ。でも、こちらではとても心穏やかに過ごせてますわ」
「それに・・・こうして殿下がお心を砕いてくださいますから私も幸せ者ですわね」
そう言って目の前の彼女は少しつり上がった目を緩めて微笑んでいる。
僕は特別秀でているわけではなくて、普通の王子で。
婚約者はちょっと僕にはもったいない人かもしれないけど。
こんな穏やかな流れが僕には合ってるかなって思う。
クーデターが起きたときにどさくさに紛れて愛人だったひとは逃げ出して他国へ亡命してます。元聖騎士団長は愛はあってもちょっとアレなので先がない。。。
亡命先で心穏やかに生活しています。




