天遣いの終焉 〜 endless
【※お待たせし過ぎていて申し訳ないので、少しだけですが、出来上がったところまで投稿します/2024.10】
声と共に、新しい力を取り得たアンジュは、シェルター内で夜明けを迎えた。アパートの部屋に射し込んでいた、いつもの陽光は無い。視界には、ランプの仄かな灯りが心許無く照らす、見知らぬ暗がりの空間がぼんやりと映る。
だが、自身の中に芽生えたもう一つの光、そして、すぐ傍で微睡むいとしい人の吐息とぬくもり。それらが、今の彼女の希望の光だった。
外ではロンドンへの空爆がまだ続いているらしいと、街の職員づてに住人から聞いた。数日間、様子を見る事にしたが、いつ何が起こるかわからない状況。成す術もなく、迂闊に出られなかった。
身に迫る恐怖に耐え、慣れない密室空間を見知らぬ他者と過ごすという、精神的な戦いを強いられる日々が続く。そんな中だったが、たまに子供達にせがまれ、彼らを宥め、慰めるようにアンジュは歌っていた。
いつ終わるかわからない緊迫状況の中、大人達も、初めは歓談や軽い飲酒などで気を紛らわしていた。だが、次第に、ストレスが積もるにつれ、苛立って塞ぎ込んだり、突如泣き出す者が出てきた。皆、限界に近づいていたのだ。
そんな中、ジェラルドは長い間、仕事を休んでいる状況が気になり、自分だけでもアパートのある町に戻る事に決めた。アンジュはカーディフに残るよう彼女に言ったが、『離れるのは不安で耐えられない。声も戻った今なら大丈夫』と彼を説得し、二人で共に帰る事にした。
辛い日々を過ごした場所だが、あのアパートが懐かしくて仕方ない。彼処が、今では自分達の帰るところなのだと…… そんな風に思える自身が不思議でこそばゆく、こんな時だが妙に嬉しくも感じる二人だった。
――もしかしたら、スコットさんもそんな思いで、あの庭園に残ったのだろうか……
ふと、ジェラルドは切なさと共に痛感した。彼の事だ。危険だと解っていても、それでも彼処が、彼の全てだから……
大切な場所、人、もの達の為、あえて、自ら業火に身を投じる。滑稽だ馬鹿だと嘲笑われても、そんな想いすら利用されていると解っていても、それでも、人は守るのだ。踏みにじる者達から、自身の宝、尊厳を。
《続く(準備中)》




