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近未来少女Aとイデアノード  作者: 沢木 えんとつ
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ver1.1 メール

「燐ちゃん、放課後になったら一緒に新しいカフェ行く?」

「ああ、あそこか、ごめん、今日は病院に行かなきゃいけないんだ。」


もうすぐ期末試験があり、最近の放課後はレストランやカフェに皆で集まって勉強している。といっても学校の噂等、話題が尽きることなく、気が付けば日が暮れているのだが。

特段予定が無ければ断ることはないが、予定があれば仕方がない。今日は月一回の調整検査の日だ。


 「そっか、ごねんね燐ちゃん、お大事に」

 「うん、ありがと」


 周囲は私が事故の影響で機械に頼った体になっていることを知らない。知っているのは祖父母、担任の先生、担当医、エンジニア、くらいかな。見た目に特徴はないので、そのことがバレる心配もない。それでも、普段からバレないように細心の注意を払っている。気になる点は、首のチョーカーだけど、治療用器具ということでごまかしているし、体育の授業も水泳を休むだけで、基本みんなと一緒に受けている。もし、みんなが私は普通じゃない、サイボーグだと知ったらと考えると恐ろしい。私は普通の女子高生でいたいのだ。


病院へは自動バスが一番早いが、生憎の炎天下なので、この時期は避暑地になる地下鉄を使っている。

地下に入ってすぐに、聞きなれた声が耳に入る。

「こんにちは皆さん。私の名前はエアリス。あなたの過去、現在、未来を支援します。次世代人工知能が、あらゆる最適解をあなたに提案します。いつでもあなたのお傍にエアリスを。株式会社電京アーツ。」

まるで大人のソプラノ歌手が朗読するような美しい、それでいてどこか儚さを覚える女性の声が耳に注がれる。街中の環境音は嫌いだが、なぜか、その声だけは私の琴線に優しく触れる。この声の主は本当の人でない。最新MIRAI型人工知能エアリスのボイスメッセージだ。人は人に近づいた無機質な物を本能的に嫌うが、それは人間が僅かな、塵程の違和感を抱きやすいからだと授業で聞いたことがある。しかしどうだろうか。先程の声には違和感は一切なく。それどころか人よりも人を惹きつけるすばらしい透き通った声だった。一体人工知能はどうやってあの美声を生み出しているのだろうか。


「ただいま電車は五分ほど遅延しております。ただいま・・・」


突然、無機質な音声が切り替わった。珍しい。電車の遅延なんて人生で二度目だ。しかも五分も。行き交う人が足を止めてスマホで遅延情報を表示したディスプレイを撮っている。私もスマホを取り出そうとしたとき、


「ブーー」


突然スマホにメールが来た。送り主は不明だが今時メールを送るのは病院くらいだ。もしかしたら新しいアドレスに病院が変更したのかもしれない。私はメールを開いた。


「何よこれ・・・」


それは見たことのない英数字の羅列だった。すると次の瞬間、スマホが勝手に画面を変えてアップデート中になってしまった。そういえば情報の授業で、昔はメールを使って感染するコンピュータウイルスがあったという話を聞いたことがある。


「参ったな」


ふと面を上げると五分遅れで電車がやってきたところだった。とりあえず病院に向かうことにした。


「次は、新都東駅―」


え? 電車を間違えた? 次は大東京湾橋駅の筈だ。

そう思った次の瞬間、風景を映していた電車の窓ディスプレイが赤い画面に切り替わる。ドアの窓を除くと、電車は大東京湾橋駅を通過して、それどころか、どんどん加速している。

電車の中も騒然とし始めた。


「どうなってんの」


「ブーブーブー」


いつのまにかアップデートが終わったスマホに電話がかかってきた。とても出られる状況ではないが、いつまでも鳴り続けているので、電話に出た。


「もし、もし?」


「はじめまして、私はユーザー支援汎用自律型人工知能メイです。突然の連絡、失礼いたします。貴方の乗車する電車は三百四二秒後に停車中の対抗電車と衝突します。いますぐ非常停止処理をすることを推奨します。」


「はい?」


読んでいただいてありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価をお願い致します。

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