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近未来少女Aとイデアノード  作者: 沢木 えんとつ
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プロローグ

 -------------< 近未来のある都市:ビル爆発事故発生現場 >---------------


 ある日突然、日常が変わることがある。それは新しい学校に通うときだ。それは新しい家に住むときだ。それは大きな災害に遭うときだ。そして、それは事故に遭って、担架に担がれて夜空を眺めているときだ。赤い点滅と星の見えない夜空が視界に広がる。頭がぼうっとして周りの音が遠くに聞こえる。手を動かそうとしても、体に力が入らない。さっきまで何をしていたっけ。思い出せない。私と同じくらいの少女の顔が頭に薄っすら浮かぶ。あの子は誰だっけ。わからない。白いヘルメットを被った人が私に話かけている。何をしゃべっているのだろうか。聞いた方がよさそうだけど、ものすごく眠い。体も重い、少し寝よう。あとで話聞くから良いよね。おやすみ。



 この日、私の運命は一変してしまった。今から十年前の十二月二十三日。クリスマスイブ前日に私と私の家族は爆発事故に巻き込まれた。母親も父親も兄もこの事故で亡くなり、当時六歳だった私だけが生き残った。小学校で同じクラスの子と偶然遭遇して、一緒にぬいぐるみコーナーを巡っていたため、爆心地から少し離れており、奇跡的に助かったのだ。一緒にいた子も救出されて昏睡状態だったが、数週間後に死んでしまった。


私は一命を取り留めたものの、左手を失い、脳を損傷して、体を動かすことはおろか、日常会話をすることもできなくなった。二度とまともに喋れず、永遠に歩けないのだ。家族もいなくなって、孤独の中で、病院のベットから一生動けないかもしれないという絶望的な日々を過ごしていた。毎日することといったら、病院から見える空を眺めて、晴れなら雲を見つめ、曇りならテレビを見ることぐらいだった。いっそのこと殺してほしいと願ったが、それすら口にすることはできなかった。


 そんな日々が暫く続いたある日。古くからの父の友人という人物が、ある提案をしてくれた。それは負傷した脳と神経を機械が補う手術をするというもので、詰まる所、サイボーグになるということだ。当時、サイボーグは嫌いだった。私の見ていたアニメでは、サイボーグは敵キャラで、しかもすぐにやられてしまう、悪い上に弱い奴だったからだ。でも喋ることも身体を動かすこともできないキャラはアニメに出てこない。今の自分はもっと嫌だった。数か月後、私はその手術を受けた。


 手術のあと、私の日常は少し元に戻った。会話もできるようになり、普通に歩くこともできるようになった。私の脳にはマイクロチップが埋め込まれており、首のチョーカーから電力を供給している。ただ、それだけでは体を思い通りに動かすことができず、特殊な身体支援スーツを着ている。脳の命令に合わせて特殊スーツが私の動きを再現してくれるのだ。見た目も思っていたような機械人間じゃなくて、普通の人と全く変わらない。私は普通の子供に戻れることが何よりも嬉しかった。それから十年、私は普通の人として育った。祖父母の家で暮らし、朝は特殊スーツを着て(機械に着せてもらって)学校に通う。友人もたくさん作って、学生生活を十分に謳歌していた。サイボーグ化の影響なのか運動神経が良くなり、医者やエンジニアに反対されつつも中学では陸上部に所属した。

そんな日常が続いた。だけど久しく忘れていたことを、思い出してしまった。ある日突然、日常が変わるかもしれないということを。





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