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 いつもの通りエマ様に魔法をかけてもらって、いつも通り魔法の副作用でしんどくなって、そしていつも通り私はフィルとの待ち合わせ場所に来ていた。


 だけど、待っている間私の気持ちはいつも通りとはいかなかった。


(服、これで大丈夫よね。顔に何かついちゃっていないかしら)


 妙に気になって、服のしわを伸ばしてみたり、手鏡を頻繁に確認してしまう。


(はあ、今の私、はたからみるとどんな風に見えてしまうのかしら……)


 変な女性だと思われるに違いない。もう確認するのは止めにして、堂々とフィルのことを待って居ようじゃないか。


 ……なんて決心しても、秒針が一周するころには元に戻って、ちらちらと鏡を気にしてしまう。


(ああもう私ったら……! 服やらなんやらはエマ様に見てもらったんだから大丈夫に決まっているのに! どんだけ頭ぼけているのよ!)


 どう考えても恋心に振り回されてしまっている。

 他の人よりも理性的だと思っていたので、まさか自分がこんなにも慌てふためくなんて思いもしなかった。しかも、フィルが来る前に。


(おちついて、おちつくのよセシリー! そう、いつもの通りにすればいいのよいつもの通りに!)


 何かあったときに使えるように、エマ様から借りているエメラルドを握りしめる。

 この宝石は三つの機能を持つ宝石だ。


 一つ目は、エマ様との連絡が取れる『テレフォン』機能。


 二つ目は、周りの人の意見をこっそり集めることができる『オーディエンス』機能。


 そして三つ目は、何択か選択肢があるときに適切そうな選択に絞り込んでくれる『フィフティーフィフティー』だ。


(この力を最大限に使って、どうにかフィルとのデートを切り抜けてみせるわ……!)


 正直いうと緊張を解くための方法を『オーディエンス』機能で聞いてみたいが、残念ながらこの機能は一度使うと今日中にもう一度使うことはできない。だから本当に必要なタイミングを見計らって、使わなくては。


 なんて思っていた、次の瞬間。


「お待たせ、リリーちゃん」


 他の人たちをすり抜けて、フィルは駆け寄ってきてくれた。


 ナディーヌ様が怯えていたような不穏な空気は何もなく、いつもの通り柔らかい笑みを向けてくれる。


「一週間ぶりだね。元気だった?」

「ええ、元気でした」

「そっか。よかったよかった。あれ? 今日はイアリングつけてきたの?」


 彼は手を伸ばすと、なんと、耳を軽くさすってくるではないか。


「ふぁ!?」


 思わず飛びぬいて、彼に触られた耳を手で覆う。


「きゅ、急に触らないでください!」

「ごめんごめん。それにしてもすごく顔が赤くなっているよ? 暑さのせいかな?」

「分かっているくせに……!」」

「ばれちゃった? ふふっ、ごめんって」


 彼はころころと笑うと、優しく頭を撫でてくれる。

 なだめてくれようとしているのだろうが、全くの逆効果。顔がもっと赤くなってしまう。


(これは、これはまずい……! 今すぐここから逃げたい! ああでも、そんなことしたらフィルをデートに誘った理由がなくなる!)


 だけど、このままほっておいたら私、緊張で頭が爆発しちゃう……!


(ええい、仕方ない!)


 私は意を決して、宝石を握りしめた。


(『オーディエンス』! 緊張を解く方法を教えてください!!!)


 宝石は心の声に反応して情報をかき集めてくれる。

 そして出た答えは……!


『何度も繰り返していると、慣れて緊張しなくなるゾ!』だった。


(いやいや!! 緊張解きたいの今!!! 何度も経験した後じゃない!!)


《ええいここぞというときに使えない!!》


 宝石を握りながら心の中で思いっきり叫ぶと、恐る恐るといった様子で頭の中で女性の声がする。


《……えっと、ごめんなさい……?》

《わーっ! すみませんエマ様! 違うんです! 今のは勢いで……! 本心ではないんです!》


(しまった、宝石を握りながら強く念じちゃうとだとエマ様に『テレフォン』しちゃうんだった!)


《こ、これからフィルと話してきますね! では!》


 大人げなく通信を切って、フィルにぎこちない笑みを向ける。


「そ、それでは……。今日はどちらに行きましょうか」

「僕はどこでも。リリーちゃんはどこか行きたい場所ある?」

「あ。そうでした。灯ノ花なんですが……」


 私が触ってしまったことは伏せて、間違えて枯らしてしまったと誤魔化す。どうせフィルにはバレているのだろうが、真実を言うわけにはいかないから仕方ない。


 フィルは特に追及せず、「それなら買いにいこうか」といって商店街に行くことになった。


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