表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/50

23

 

 私、セシリーは絶句し、怒りで震えてしまった。

 

「それは本当ですか。あのフィルがこともあろうにエマ様に酷いことをした、なんて!」

「いえいえそんな! フィル様もフィル様でセシリー様のことが心配だったんでしょうし」

 

 エマ様は慌てた様子で否定するが、いつもポシェットにいる白うさぎ、ビッちゃんはそうはいかない。ビっちゃんは机の上に乗っかり、腹立だしそうに後ろ脚で机を叩きつける。

 

『あの人間風情が! ボクがその場にいたらぎったぎったのボロボロにしてやったのに!』

「ビっちゃん、そんな怖いこと言っちゃ駄目でしょう!」

 

 あの普段寝てばかりでめんどくさそうにしているウサギちゃんが、ここまで怒っているのだ。相当ひどいことを言われたのだろう。

 

「本当に申し訳ありません。うちのコック長がエマ様にそのようなまねを……」

「大丈夫ですって。ビっちゃんがちょっと大げさに騒いでいるだけですから。ビっちゃんも落ち着きなさい。ああもう、机をかじっちゃ駄目でしょ!」

 

 エマ様はビっちゃんをポシェットにしまう。抵抗もせずにしまわれるウサギちゃんだが、不機嫌そうに目をつりあげている。それもそうだ。自分の主人が傷つけられたのだから怒って当然だ。むしろ、エマ様のように許してくれる方が稀だ。

 

(全くもう、フィルったら……! エマ様がお優しかったからよかったようなものの!)

 

 他の屋敷で同じことをやってしまったら最悪解雇もありえる。

 

「私、後で強くいっておきますね!」

 

 勢いでそういうが。

 

「あ、でもそうなるとフィルと顔を合わせないといけないのか……」

 

 それは……。今は出来る気がしない……。

 

 どうしようかと悩んでいると、エマ様はきょとんとして私に尋ねる。

 

「フィル様からお聞きになったときから気になっていましたが、どうしてセシリー様はフィル様とお話しされないんですか?」

「……えっと、」

 

 どうしよう、フィルへの恋心をここで暴露するべきだろうか。

 いやでも恥ずかしいし……。

 いやでもここは言うべきか……。

 いやでも。

 

『ボクは分かるよ。どうせその女があのコックに恋しているからだよ』

「え!? 恋!?」

「ちょ、ビっちゃん!?!?」

 

 あっさりとばらされてしまった!!

 

 うろたえる私だったが、エマ様は目をらんらんと輝かせて私の手を握る。

 

「そうなんですね! とうとうお二人の間に恋が芽生えられたのですか!! おめでとうございます! 結婚式には是非ともお呼びください!!!」

「エマ様気が早いですよ! け、結婚式なんて、そんな、しませんって!!」

「え! もしかして、最近はやりの式をあげない結婚ですか?」

 

 違う! そうじゃない!!

 

「そもそも結婚自体しませんから!!! むしろ付き合いませんって!!」

「へ? 付き合っているじゃないですか」

「あれはリリーとしてっ! セシリーとしては付き合っていません!」

「ええ!!?? 正体をばらさないのですか! 好きなんですからお付き合いしましょうよ!?」

「向こうが好きとは限りませんって!」

「わたくしの見た感じですと、フィル様はセシリー様のことを好ましく思っている気がしますから大丈夫ですよ!」

「いやいや、それはありえませんって。嫌い……ではないでしょうけど、好きとまでは……」

「好きだからこそ、フィル様はわたくしにあんな強い態度に出たんですって!」

「……それは……ほ、ほら、家族だと思っているからに違いないですよ! 恋愛感情は絶対ありませんって!」

「ですけど」

 

 ええい、エマ様押しが強い!!

 

 ここはもう仕方ない。最終手段だ。

 

「そ、そういえばもうフィルとのデートに行く時間ですよ! 魔法をかけていただいてもよろしいですか!」

「あら、本当ですね! それでは準備をしましょう。今日は張り切って魔法をおかけしますよ! フィル様がセシリー様に惚れてしまうように!」

「……ははは」

 

 真っすぐなエマ様の言葉に、私は愛想笑いをしてやり過ごした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ