第0話 プロローグ 「沈んだクルーザー」
黒海、カスピ海の近くにある、面積が43万平方キロメートルの海だ。
この日本の面積よりちょっと広いくらいの海で、高見澤貴詞は、クルージングを楽しんでいた。夏ということもあり、
トルコへワーキングホリデーに来ていた、20歳の青年だ。ワーキングホリデーで出会った、恋人と一緒に、黒海を横断をしていた。
「花音ーー釣りでもするか??」
クルーザーの前方にいた、桜井花音は、貴詞の呼びかけに振り向いた。
「良いよー、」
「目指すは大物釣るためにな!!!」
「貴詞あたしリール巻くの手伝ってあげるね!!」
貴詞は、釣り糸を伸ばすとリールを思いっきり回した。花音はそれを手伝いながら、二人は釣りを始めた。2人はシーバスを釣る事を目標にしていた。この黒海ではよく釣れるという事で有名だった。
確かに近くにあるカスピ海では淡水魚くらいしか釣れないのである。
貴詞と花音は餌に、マイワシをセットした。シーバスの大好物であるみたいだ。
既に、陸の空気を吸いそして大きな目玉はオオチョウザメの存在である。
「この黒海はオオチョウザメが生息している事でも有名なんだ。」
貴詞は自分の魚知識を花音に話し始めた。
「オオチョウザメ???キャビアじゃん。キャビアとかも取れんのね。」
あの有名なキャビアがこの黒海で取れる事が1番の驚きだった。
「しかし折角ならエーゲ海とかアドリア海とかにしても良かったじゃん。」
花音はふとそう答えた。
「まあ1番近いからね。あんまり遠出するのが好きじゃないだけ。それに俺は、この海が1番好きなのさ。
小さい頃からの憧れだからね。」
貴詞は子供の頃、この黒海の存在を知った時にいつか行ってみたいとそう思っていたのだ。
クルーザーが、黒海の最深部へ辿り着いた時だった。遥か前方から巨大な船が現れた。
「ちょっとすごいスピードで来るわよ、こっちに!!!!!!!」
「嘘だろ!!!!!やべえぶつかる。」
花音が言ったので慌てて、貴詞は操縦桿を握った。船舶免許まで取得していた貴詞にとって船を操縦して以来初めての良きせぬ事態だった。
ガッシャーン!!!!!!!!!
凄い音がして、2人のクルーザーが巨大な船に激突して、沈んでしまった。
貴詞と花音は、船外へ放り出された。黒海の冷たい海水が、貴詞の口の中へ入ってきた。
「花音、花音どこだーー?????」
しかし、花音の姿はない。くそーー。
やばい溺れる。体が冷たくなってきた。貴詞の身体は海中へと沈んで行った。
目の前が真っ暗になった。