メイVSニア
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「――お兄様……一体どういうことでしょうか? 出先で妹を作って来るなんて」
シュウゴはカムラに帰還してすぐにハナと別れ、紹介所へ寄る前にニアを匿おうと家に戻った。
メイは帰って来たシュウゴの元に駆け寄ろうとしていたが、ニアの姿を捉えると表情を凍らせ、シュウゴの前に仁王立ち。デュラも立ち上がってすぐに固まる。
メイは笑みを作ってはいるが、声は氷点下だ。
シュウゴは異様な緊張感に内心ビクビクしながら口を開く。
「待て待て、クエストに行ったって妹は作れるもんじゃないぞ」
「言い訳は聞きたくありません。だから心配だったのに……」
メイは「はぁ~」と深いため息を吐いた。
シュウゴはあくまで自分の無実を主張しようとする。
「ちょっと待て! 別に言い訳でもないし、一体なんの心配をしてたんだよ!?」
メイが「むぅ~」と黙ってジト目をシュウゴへ向けていると、ニアがシュウゴの横に並んだ。
「柊く~ん、この娘もお嫁さん~?」
シュウゴはぎょっとした。この娘はなんてことを言い出すんだと。それに、
(「も」ってなんだよ、「も」って。結婚うんぬんの話は終わったことじゃないのか)
シュウゴは冷や汗を掻きながらニアにアイコンタクトを送る。するとニアは花が咲くようにぱぁっと微笑んだ。
シュウゴはガクッと肩を落とす。
「おっ、おおお嫁さん!? な、なんて破廉恥な!」
メイは顔を真っ赤にしながら頬を引きつらせた。ショックで後ずさっている。
「いやなにがだよ!?」
シュウゴは思わず突っ込んだ。メイのピンク耐性はゼロどころかマイナスか。
それに比べデュラはニアの前に膝を立て、その手の甲に口(兜の口の部分)をつけている。いつの間にかニアに忠誠を誓っていた。
「お~くるしゅ~ないぞ~」
ニアは楽しそうだ。
「デュ、ラ、さ、ん~~~」
メイの怒りの声が聞こえた途端、デュラはビクッと肩を震わせ、慌てて定位置の壁際に戻り、そっぽを向いた。
「デュラさん、信じていたのに……」
シュウゴが苦笑しながらメイに落ち着くよう言うと、彼女は頬を膨らませはしたが一旦気を落ち着かせる。
シュウゴは相好を崩しホッと息を吐いた。
「紹介するよ。彼女はニア。竜人で龍王の娘だ。それでニア、こっちの女の子がメイ、アンデットっていう特別な種族の女の子だ」
龍王の娘と聞いて、メイは驚いたように目を見開いた。当然の反応か。
ニアはアンデットと聞いても特に動じず、ニコニコしながら先ほどの質問を繰り返す。
「よろしく~。柊くんのお嫁さんじゃないん~?」
「こちらこそよろしくお願いします。私は妹です」
メイはキッパリと言った。
(だから妹じゃないって言ってるのに……)
シュウゴはため息を吐く。
「じゃぁいいや~」
ニアは興味を失ったようにメイから視線を外して室内を見回す。
そして最後にシュウゴを至近距離で見つめると、
「柊くん、カッコいい~」
ニアは満面の笑みを浮かべシュウゴの腕に頬ずりしてきた。
シュウゴはびっくりして素っ頓狂な声を出す。
「ちょっ、ちょっとニアっ?」
「ぐぬぬぬぬぬ」
メイが忌々しげに眉をしかめ、唸っていた。
そしてメイは、シュウゴの腕に押し当てられているニアの豊満な胸を見て、頬を膨らませながらそっぽを向く。
「お兄様は、慎ましやかなのがお好きなんです」
「え~? 父上言ってたよ~? 男は皆、大きなおっぱいが好きだって」
ニアはそう言って両脇から胸を押して強調し、勝ち誇ったような薄笑いを浮かべる。
(待て待て待て待て。龍のメスに大きな胸とかあるのか!?)
シュウゴは内心で突っ込んでいた。それにしても、いたいけな少女にそんなことを教えるなんて、あの竜とんだエロ親父だ。
「ぐぬぅぅぅ~」
「むふぅぅぅ~」
らちが明かないと思ったシュウゴは、こっそり二人から離れ、デュラに手伝ってもらいながら戦利品の整理や装備の収納を始めた。
「ふんっ!」
やがてメイはぷんすかしながらそっぽを向いた。
――メイはそれからしばらく機嫌が悪かった。
「なあメイ、機嫌直してくれよ」
「別になにもないです」
そう言って口を尖らせる。拗ねているのが丸分かりだ。
「ニアの言ったことが引っ掛かってるのか?」
当のニアは、能天気に目を輝かせながら、家のアイテムボックスをガサゴソと漁っている。魚を漁る猫じゃあるまいし……
メイは、ニアが動くたびに揺れる胸に恨みがましい視線を送っている。相当根に持っているようだ。
「ハナさんもお胸が大きいですもんね!」
メイは急にそんなことを言って口を尖らせた。
シュウゴは小さく嘆息すると、メイの両肩を掴み自分の方へ向かせた。
「別に胸がどうこうとか関係ないよ。メイにはメイの良さがあるじゃないか。俺は君の上品な立ち振る舞いが好きだし、年齢の分、ハナよりも魅力的だと思うよ」
真剣な表情でそんなことを言った。
メイはみるみる頬を紅潮させる。
「も、もぅお兄様ってば……」
メイは満更でもなさそうに「にへら~」と表情を緩ませ、頬に手を当てている。
そんな二人の元へニアが歩いてきた。
「む?」
メイは警戒心をあらわにする。
しかしニアは、ニコニコと笑ってメイを見つめていた。
「柊くんより~私の方が年上だから、私がお姉さん~。だから、メイも私の妹~」
ニアはそう言ってメイの頭を撫でた。
「そ、そんなので、私は手なずけられたりなんて……」
いつの間にかメイは気持ちよさそうに目を細めていた。
無邪気なニアに、メイもすっかり毒気を抜かれてしまったようだ。
「むふふ~。グリプスもこうやると気持ちいいって言ってたの~」
さすがは野生児。見た目以上にたくましい。
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