表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/246

直撃

「くそっ!」


 先手必勝とばかりにシュウゴが真正面から突貫した。それと同時にデュラとハナも走りだす。


「グルァァァッ!」


 接近してきたシュウゴの頭上へ、ベヒーモスの角が振り下ろされる。

 しかしシュウゴはサイドへ瞬発噴射し回避。通常なら、それで回避できたはずだった。


 ――バヂンッ!!


 シュウゴの頭上から小さな雷が落ち、地面に叩きつけられる。

 そのまま踏みつぶそうとベヒーモスが左前足を上げるが、横からデュラが跳びかかりランスを突き出す。


 ――バゴンッ!


 前足はシュウゴの代わりにデュラを叩き潰し、地面に押し付けた。

 シュウゴは動こうとしても雷で体が麻痺し、思うように立てない。

 次に右方向からハナが迫る。

 しかし太刀の有効な攻撃範囲に入る寸前、ベヒーモスは前足を振るった。


「んな!?」

 ハナが驚愕の声を上げる。

 届かないのはずの攻撃だった。

 しかし、ベヒーモスの爪は帯電しており、緑色の刃がレーザーのように伸び、宙を裂く。


「くぅっ!」


 ハナは間一髪、片足で地を蹴り体を逸らすが完全には躱しきれず――


 ――ザシュッ!


 左肩を肩当ごと切り裂かれ、衝撃で後方へ吹き飛ばされた。

 ハナは勢いよく転がると、鮮血で溢れた肩を抑えうずくまる。

 そして獲物を逃すベヒーモスではなく――


「ガルルルゥ」


 角の前に雷を収束し始める。

 先ほどレーザーを押し返したものと同じモーションだ。

 その照準はハナ。


「ハナ! 逃げろ!」


 シュウゴが体をピクピクと痙攣させながらも、かろうじて立ち上がり叫ぶ。

 しかしハナも麻痺して動けない。

 デュラはベヒーモスに踏みつけられ、メイはまだ倒れている。

 そして無情にも、稲妻が激しい音を立てながら収束していき、緑光のレーザーが放たれた。


「させるかぁぁぁっ!」


 ハナにトドメの一撃が刺さる寸前、シュウゴがバーニア最大出力でハナへと迫り、彼女を突き飛ばす。

 目を見開き離れていくハナは、手を伸ばしシュウゴへなにかを言おうとしていた。


 ――ズバアァァァァァァァァァァンッ!


 その声は届くことなく雷鳴にかき消された。


「い、嫌ぁぁぁぁぁ!」


 シュウゴは全身で高熱量の電撃をもろに食らい、エメラルドの光に身を焦がされながら吹き飛んでいく。

 ハナは彼が散りゆく様を唖然と見届けていたが、駆け寄ることはしない。


「ベヒーモス……私から何度奪えば、気が済むのよぉぉぉっ!?」


 怒り狂い、ベヒーモスを睨みつける。

 血まみれの左肩など意に介さず太刀を強く握りしめ、鬼気迫る勢いでベヒーモスへと駆け出した。

 デュラも突然激しく暴れ出し、ベヒーモスの足の下から抜け出した。

 そして、ただがむしゃらにベヒーモスへ飛び掛かる。


「……お兄、様……」


 メイの麻痺が治ったときには既に遅かった。

 シュウゴは電撃になす術もなく吹き飛ばされ、仲間たちは理性を微塵も残さずベヒーモスに飛び掛かっている。

 メイは震える足でシュウゴの元へと歩み寄る。

 怒りはない。憎しみもない。ただただ悲しかった。


「お兄様……」


 メイがシュウゴの体の横に膝を落とし、悲嘆の声を漏らす。

 シュウゴの体は至る所から煙が上がっていた。

 あれほどの熱量の電撃であれば当然か。

 目をつぶり無防備に脱力している様は穏やかなものだった。

 メイはシュウゴの右手を両手で包み、ゆっくりと自分の額に当てた。


「お兄様ぁぁぁっ!」


 メイの慟哭が戦場に響き、涙が荒野に落ちる。

 そして――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ