うずく探求心
「ふぅ、今日のところはここまでにしておこう」
シュウゴはデュラとメイを引き連れ、孤島の洞窟でアイテム採取をしていた。
ここはいつも高価な鉱石や薬草が採れるので重宝している。
三人は袋一杯に鉱石類、特殊な色の薬草、イービルアイの翼やジャックオーランタンの小枝などを詰め込み、洞窟の入口まで戻って来た。
孤島の洞窟の探索はある程度終わり、どこでなにが手に入るのかも整理済みだ。
ただ、ケルベロスの部屋以外で未だに足を踏み入れていない場所がある。
「どうするか……」
シュウゴは背後を振り返り、五方向に伸びている道を見た。
このうちの一ルートだけ、誰も開拓に成功していない。
その理由は、クラスBモンスター『ミノグランデ』が待ち構えているからだ。
ミノタウロスとデーモンを融合させたような巨大な悪魔らしいが、シュウゴはまだ戦ったことはない。
道の合流点である洞窟の最奥から回り込もうとしても、途中にある扉が内側から鍵かけてあるせいで正面突破以外の方法がないのだ。
とはいえ、そのルートだけ通れなかったとしても特に困ることはない。
ただシュウゴ個人としては、そこでしか取れないアイテムがあるかもしれないので、なんとしても突破したいところ。
(今はどうしようもないか。クラスBだしな……)
シュウゴは心の中でため息を吐くと、首を傾げているメイとデュラを連れカムラへ戻る。
~~ミノグランデ~~
クラスBモンスターであり、現在の出現情報は孤島の洞窟のみ。
ミノタウロスとデーモンを足して二で割ったような怪物で、悪魔のように暗い紫の肌色に筋骨隆々の巨体。
両手で巨大な斧を持ち、背には黒く大きな悪魔の翼が生えた魔獣だ。
肉弾戦を得意とし、豪快に振り回される斧への対抗策と、鋼のような肉体を傷つけられる攻撃力が必須らしい。
「ふむ……」
シュウゴは広場の掲示板の前で眉を寄せていた。
デュラは目立つので家に置き、メイは噴水横の長椅子に腰掛けて足をブラブラさせながら、ニコニコとシュウゴを眺めている。
メイは先日の沼地での一件でバラムに認められ、正式にクラスCへと昇格した。
それはデュラも同様で、これでパーティーの三人全員が同ランクとなり、三人とも同じクエストを受けられるようになった。
メイはそれ以来、ハンターとしてシュウゴと行動を共にしている。
とはいえ、彼女は元々サポートタイプなので、前衛はシュウゴとデュラが務め、後衛で遠距離射撃やアイテム使用などの戦闘補助に徹している。
彼女もデュラ同様、真面目で頑張り屋なのでシュウゴとしては文句のつけようがない。
シュウゴはしばらくミノグランデの張り紙と睨めっこをした後、なにやら一人で頷くと、メイへと振り向いた。
その表情は決意に満ちている。
「それじゃ、今日は帰るか」
「はいっ」
メイはニコッと可憐に微笑んで立ち上がり、シュウゴの隣に並んだ。
メイもシュウゴがミノグランデと戦う決意をしたことはなんとなく察しているだろう。
だが恐れているようには感じられない。
それどころか小さな手を顔の前でギュッと握りしめ、シュウゴを見上げた。
「お兄様、私頑張りますねっ!」
「あ、ああ。ぜひとも頼むよ」
シュウゴはメイのやる気にけおされたように苦笑すると、ゆっくり頷き歩き出す。
シュウゴはそのまま家に帰らず南下し、港に立ち寄った。
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