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メイの戦い

 コカトリスは真正面から急接近するシュウゴへ猛毒の塊を吐き出す。

 以前、彼の左腕を溶かした漆黒と深緑の猛毒ブレスだ。

 シュウゴは肘とブーツ側面からバーニアを噴射し水平に避ける。

 コカトリスが連続して、一定のリズムでブレスを放っていく。

 シュウゴはアイスシールドの内側からコカトリスを捉えつつ、飛来する猛毒の塊を避けながら肉薄した。


「食らえぇ!」


 コカトリスの頭上から大剣を振り下ろすも、コカトリスは身を反らしかすり傷程度しかつけられない。

 反撃とばかりに紫色の翼をシュウゴに叩きつけてくる。

 シュウゴはアイスシールドで防御するも大きく押し飛ばされた。


(まだまだ!)


 すぐに体勢を立て直すと、高速で迂回しコカトリスの斜め後ろへ回る。

 そのままコカトリスの首を断とうと大剣を振りかぶる。

 しかしコカトリスとて反応できないわけではない。

 体勢を斜めに傾けたかと思うと、シュウゴの斜め上からコカトリスの尾が振り下ろされた。

 深緑の光沢放つ鱗に覆われた蛇の尾が。


「しまっ!」


 まともに食らってしまったシュウゴは、思わず大剣を手離し、自身も勢いよく叩き落される。

 このまま落ちれば下は毒沼だ。

 しかしこの勢いだと、バーニアを噴射しても落下の速度を緩める程度に過ぎず、着水は避けられない。

 シュウゴは左腕『オールレンジファング』をコカトリスへ放った。

 後は掴んだ部位へ向けて腕の糸を巻き取るしか落下を食い止める方法はない。


「――んなっ!?」


 しかし頼みの綱である左腕は、なにかを掴む前にコカトリスの尻尾によって振り落とされた。

 もう毒沼への落下は不可避。そう思われた。

 そのとき、シュウゴの左手はなにかに掴まれた。


「デュラ!」


 シュウゴの左手を空中で掴んでいたのはデュラだった。

 彼はそのままの勢いでコカトリスの背に乗る。

 シュウゴは急いで風魔法を発動し糸の巻き取りを開始。

 間一髪、毒沼表面すれすれで止まったシュウゴはデュラの元へ向かう。

 しかしデュラは、シュウゴの左腕を右へと思い切り放り投げた。


「っ!?」


 その直後、コカトリスがその場で体を暴れさせデュラを振り落とすと、落下するデュラの真上からクチバシを叩きつけた。

 大きな衝撃音のすぐ後に盛大な水しぶきが上がる。


「デュラぁぁぁっ!」


 横へと投げ飛ばされていたシュウゴはやがて、地面に叩きつけられ泥をはねさせながら転がる。

 激突の衝撃で体中に痛みが走ったものの、すぐさま立ち上がる。

 デュラに投げられたおかげで毒沼から離れた陸地に着地していた。

 しかしコカトリスも既にシュウゴへ狙いをつけていた。


「カアァァァ!」


 コカトリスは叫びシュウゴ目掛けて飛んでくる。

 シュウゴはすぐさまバーニアを起動して飛び上がり、今度は背を向け逃げ出した。

 枯れた木々をかわし底なし沼の上を飛びながら、背後から放たれる猛毒ブレスをかわしコカトリスを引き付ける。

 しばらく円周上にジグザグ進み、頃合いを見計らって急に反転した。

 コカトリスと向き合い、アイスシールドを展開すると、バーニア全開で真正面からぶつかる。


「ぐっ!」


 シュウゴは衝撃で呆気なく吹き飛ばされたものの、コカトリスはその場で滞空した。

 シュウゴは大きく飛ばされながらも必死に叫ぶ。


「今だ! メイ!」


 そのとき、極太の光線が飛来した。

 それはコカトリスの翼を掠める。

 コカトリスは「カッ!」と驚いたように短く叫ぶと、光の飛んできた方向に目を向け獲物を見つけた。

 枯れた木々の根元の薄暗い草むらで、メイが慌てた様子でアイテムポーチを漁っている。

 しかし焦りのためかボロボロとアイテムを地面に落としてしまい、目的のものが見つけられないでいる。


 作戦が失敗しかけていた。

 シュウゴがコカトリスを足止めしている間に、メイがフル出力のレーザーをコカトリスに直撃させる。

 それが失敗しても、メイの存在に気付いて目を向けたコカトリスの目をフラッシュボムで潰す。それが作戦だった。

 今はそのどちらも失敗。

 次のレーザー照射までのインターバルは十秒程度。

 このまま襲い掛かられたらひとたまりもない。

 シュウゴは地面すれすれで受け身を諦め、オールレンジファングを放った。


「ぐはっ!」


 本人は激しく体を地に打ち付けるが、泥だらけで柔らかかったことが幸いした。

 今にもメイへ向かおうとするコカトリスの眼前を左腕が遮る。

 その手にはフラッシュボムが握られていた。


「――カアァッ!」


 すぐさま閃光がコカトリスの視界を焼き、無様に地面へ叩きつける。

 そしてその地面にはスパイダーホールド。

 アラクネの糸を利用して設計したトラップアイテムだ。

 コカトリスが地面でもがけばもがくほど糸が絡まり、十数秒は足止めできる計算だ。

 これはシュウゴたちが陽動となってコカトリスと戦っている間に、メイが設置した。

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