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愛しき仲間たち

 ――ズバァンッ!


「ガッ!?」


 突如、鵺の背中を強い衝撃が襲った。

 彼が振り向くと、ピリピリと放電しているブリッツバスターを握ったシュウゴの姿があった。

 漆黒の電撃が直撃したのだ。

 鵺はシュウゴの姿は見えなくなった時点で外套の内側をアンフィスバエナの鱗で覆っていたために大したダメージはない。

 だが翻弄され続けたことで、鵺の怒りが限界に達した。

 

「貴様ぁ……魔神の力をっ、なめるなぁっ!!」

 

 鵺が憤怒に顔を歪め、時空を揺るがすかのような激しい叫び声を上げる。

 その直後、シュウゴの周囲の空間に亀裂が入った。

 唖然と目を見開くシュウゴ。

 それは魔神クロノスがシュウゴを捕まえようと、扱っていた時空の亀裂だ。

 そして多数の亀裂はピキピキと音を立てこじ開けられ、無数の青白い手が覗く。

 その数はあまりにも多く、四方八方から現れるため逃げ場がない。


「――くっ!」


 シュウゴは離脱しようとバーニアを噴射する。

 しかしどこへ移動しようとも、まるで追従するかのようにシュウゴの周囲に亀裂が走る。

 鵺は圧倒的な物量によってシュウゴを捉えるつもりなのだ。

 そして遂に、亀裂は内側からこじ開けられ、まるで花開くかのように無数の青白い腕が飛び出す。


「はぁっ!」


 目前へ迫った腕の束を避け叩き斬る。

 背後から掴みかかろうとしたものは、一回転して斬り払う。

 それまでと同様に対処しようとするが、今回は物量が違いすぎた。

 無数の腕は蛇たちと同様に、シュウゴを簡単には捉えることはできないが、数が多すぎる上に不規則的に動く。


「ちっ!」


 とうとう、一つの手がシュウゴの左足首を掴んだ。

 すぐに大剣で斬り落とすが、その一瞬の静止で左肩を掴まれる。

 さらに腰を、腕を、と、気付いたときには、無数の腕がシュウゴのあらゆる箇所を掴んでいた。

 さらに蛇とサソリの尾が合流して、シュウゴの腹部や足、腕に巻き付いてがんじがらめにされる。

 シュウゴはかろうじて動く左腕を鵺へ向け、オールレンジファングを射出。

 しかし進行方向の空間が歪み、異空間の穴に吸い込まれる。

 

「ふん」


 次の瞬間、鵺の横の空間に穴が開き、バーニアを噴射した左腕が飛び出すが、鵺はそれを左腕で掴んで妖刀で糸を斬ると放り投げた。

 彼は涼しげな表情で身動きのとれないシュウゴへ顔を向ける。


「まずは邪魔な四肢を奪って、それからじっくり喰らってやる」


「っ……」


 隼のいたるところがギリギリと締め付けられる。

 このままねじり切るつもりか。

 電撃を開放して麻痺させようとするが、異空間から伸びた手には通じない。


(くそっ……なにかがあるはずだ。なにか……)


 眉を寄せ、必死に打開策を考えるシュウゴ。

 しかしできることはなにもない。


「お兄様!」


 メイが心配そうに叫ぶが、トライデントアイを放つことをためらう。それだけでは全方位から伸びる腕は消せない上に、シュウゴに当たる危険性もある。

 ここまできて万事休すに思われた。


「――なんだ?」


 顔をしかめ呟くシュウゴ。

 次の瞬間……隼の背中に装着してあった六つの小型レーザー砲『ゴースト』が意思とは無関係に外れ、宙に浮いたのだ。

 そしてそれらは独自の軌道をとって周囲に展開すると、一斉にレーザーを放った。


「っ!?」


 六つの閃光がシュウゴを束縛していた蛇や腕たちを焼き払い、開放していた。


「貴様、まだそんな手を隠していたのか」


 新たな攻撃に眉を寄せる鵺。

 しかし当のシュウゴも、困惑していた。

 確かにゴーストは、凶霧の魂を纏わせることで操れるが、彼は今それをしようとはしていなかった。 

 そのとき、シュウゴの頭に直接響く声があった。


『――援護するぞ、シュウゴ』


「……えっ!? そ、その声は……グレン、さん?」


 シュウゴは震えた。

 グレンは死んだのではなかったのか……

 さらに声はそれだけではない。


『俺の憧れた英雄が、こんなところで負けるなんて許しませんよ』


『おぅっ! まさかシュウゴのためにまた戦えるなんて、こんなに嬉しいことはないわ!』


『私はまだ、カムラを守り切れていない』


『親友、お前の底力、見せてやれよ』


 次々とシュウゴの頭に語りかけてくるのは、愛しき仲間たち。


「キルゲルト、アン、キジダルさん、それに……シモンまで!」


 キルゲルトやアンはともかく、キジダルとシモンはシュウゴがその目で死を確認している。

 つまり、死んで魂だけになった彼らは、不死王の招集にはせ参じたのだ。

 シュウゴは感極まって頬を歪める。

 だが今は泣いている場合ではない。

 しかし周囲に浮いているゴーストの数は六つ。

 声をかけてきたのは五人。

 最後の一人は――


『――我が主よ、何度死しても、あなたへの忠誠は変わりません――』


 凛々しくまっすぐで、それでいてシュウゴを慈しむかのような穏やかな声色。

 シュウゴは目を見開き、声を震わせた。


「デュラ、なのか……」


『はい。我が忠義、まだ示せていません。あなたに勝利を――』


 次の瞬間、鵺は雄たけびを上げ、再び大量の蛇、尻尾、腕を放出してきた。


「みんな、行こう!」


『『『おぉっ!!』』』


 シュウゴは仲間を信じ力強く頷くと、バーニアをフル出力で噴射して鵺へ突進する。


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