孤島の洞窟
その三日後、以前よりも格段に性能の劣る左腕を手に入れたシュウゴの家へ、一通の手紙が送られてきた。
内容は、新フィールドを開拓中の討伐隊に協力してほしいというもので、ランクC以上のハンターへ討伐隊・総隊長から正式に依頼されているクエストだ。
装備が万全でないシュウゴは迷ったものの、とりあえず話だけでも聞こうと紹介所へ向かう。
紹介所へ入ると、普段より多くのハンターが押しかけ賑わっていた。
ハンターたちの塊は三か所あり、右側の窓際テーブルでユリが、左手前のテーブル席でユラが、そして奥のクエスト受付でユナが厳つい顔のハンターたちに身ぶり手ぶりで説明をしている。
恐らく皆、討伐隊からの依頼を受けようとしているのだ。
前回のこともあり、誰かとパーティーを組んで戦うことに気が進まないシュウゴは、他のハンターたちが説明を受け終えるのを待った。
「――あっ、シュウゴさん。お疲れ様です」
ようやく受付に群がっていた四人のハンターたちが去っていくと、ユナはシュウゴが掲示板の横で所在なさげに立っていることに気付いた。
シュウゴが「どうも」と頭を下げて受付まで歩みよると、ユナは微笑む。
ただの営業スマイルではあるが、短めのハーフツインという髪型もあわさって愛くるしい。
シュウゴの頬も自然と緩んでしまう。
「討伐隊からの依頼なんですけど……」
「そうでしたか。討伐総隊長様から発注されている新フィールド開拓協力依頼ですね。それでは、私の方から概要を説明させて頂きますので――」
ユナは手元にあった薄い資料の束をシュウゴへ渡すと、説明を始めた。
まず、討伐隊は数週間をかけ、明けない砂漠の外周をぐるっと回り、あらたな採取エリアを探していた。
そして先日、砂漠の最東端……カムラから見ても遠い東に位置する絶壁で、海を隔てて離れた場所に孤島を発見したらしい。
討伐隊はすぐに小舟を用意して絶壁の下に転送し、孤島へと辿り着いた。
小さな島でそこら中に木々が多い茂っている密林。その奥に洞窟があった。
少し歩いただけで内部は広く、魔物の気配もあることから、討伐隊は腕利きのハンターたちにも探索の協力を願い出たというわけだ。
「本クエストは、『孤島の洞窟』での開拓が目的です。帰還した後、回収したアイテムの二十%を討伐隊へ納品ください。また、行動したエリアを地図に示し、討伐隊へ洞窟内の情報を共有するようお願い致します。依頼内容としては以上になりますが、受注されますか?」
シュウゴの答えは決まっていた。
たとえ万全ではない状態であっても、こんな重要なクエストに参加しないなど、ゲーマーとしてはあり得ない。
これは言わば『キークエスト』のようなものだ。それに洞窟であれば高ランクの鉱石も見つかるはず。
「もちろんです」
即座にクエストの受注手続きを終え、シュウゴは久々の高揚感を感じながら紹介所を後にする。
一旦家に戻ったシュウゴは装備を整え、さらに商業区の雑貨屋でアイテムを十分にそろえると、転石から洞窟へと向かった。
シュウゴが目を開けると、そこはどこか見たことのある幻想的な洞窟だった。
ゴツゴツとした岩が転がり、澄んだ水溜まりが広がる薄暗い鍾乳洞。
申し訳程度に緑色の草が生え、周囲の岩壁からは半透明な鉱石が突き出し、道を仄かに照らしている。
まさしくゲームでよく見るようなダンジョンで、シュウゴの胸が躍る。
転石が設置されていたのは洞窟の入口であり、目の前には五方向に分岐した道が伸びている。
討伐隊が数をそろえたいのも無理はない。
「ふぅ」
シュウゴは深呼吸すると、グレートバスターを背から肩に担ぎ直し、景色を目に焼き付けながらゆっくり歩き出した。
しばらく歩いていくと、いたるところに絶好の採掘ポイントがあり、クリスタルのような透明に輝く鉱石類を砕いて採取しながら奥へ奥へと進んでいく。
狭い空洞などでは、天井にアビススライムが張り付いていたりして奇襲されることもあったが、バーニアの炎を直接放ち辛うじて切り抜けた。
一つ目のアイテム袋がパンパンになるぐらいアイテムが集まった頃、下の階層へと繋がる細い坂道に出た。
坂の下には大きな湖があり、その先の岩地では討伐隊とハンターたちが武器を構え緊張に身を強張らせていた。
「あれはっ!」
彼らの目と鼻の先には魔物。
シュウゴは気を引き締め、坂を下りるべく駆け出す。
その魔物は、目、鼻、口がくりぬかれた小さなかぼちゃを頭とし、黄土色の樹木でできた細い肢体を黒のマントで覆っていた。
顔のかぼちゃが内部から光っているそれは、
(ジャックオーランタン?)
ハロウィンイベントなどで引っ張りダコの大人気モンスターと酷似している。
ジャックオーランタンは二十体程度。対する討伐隊は十人、ハンターは四人だ。
お互いしばらく睨み合うが、シュウゴが坂を半分ほど下ったところで――





