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決戦

(――お兄様、来ました!)


 頭にメイの声が響く。

 すぐに下を見ると、先ほど倒したヒュドラが草木をなぎ倒して戻って来た。

 これで九体。

 コアを破壊した他の個体もほとんど復活していた。 


(やれるかメイ?)


(もちろんです!)


 シュウゴの問いかけにメイは活気あふれる返事で返した。

 メイの不死王の力はこのときのために温存していた。九つの頭を同時に破壊するには、全員の心を繋ぐ必要がある。それができるのは彼女だけだ。

 メイがシュウゴ、デュラ、ニア、キュベレェの魂に干渉し呼びかけた。


(今、九つのヒュドラの頭がそろいました。みなさん攻撃の準備をお願いします。それぞれの狙いは――)


 メイが各々狙うべきヒュドラの個体を指定する。

 シュウゴは雷の収束を、ニアはレーザーのチャージ、デュラはタイミングに合わせて頭へ飛び乗る位置へ駆ける。


 ヒュドラは一斉に動き出した。シュウゴたちは回避しつつ、必殺の一撃の準備に集中。

 ここが一番の正念場だ。

 シュウゴは全神経を集中し、ヒュドラのブレスや噛みつきを回避しつつ刀身に(いかづち)(ほとばし)らせる。

 ふと左を見ると、キュベレェが後方へ下がり巨大な黄金の矢を形作っていた。

 シュウゴは思わずその神々しさに見惚れ息を呑む。

 彼女は右手を天高くかかげ、その周囲に六本の矢を並べている。そして目を見開くと、手を下ろし前方のヒュドラたちへ向けた。同時に六本の矢も各々の仕留めるべき敵へ向く。

 ヒュドラたちも彼女へ襲いかかろうと急速に首を伸ばした。


(っ! メイ!)


(今、全員の準備が整いました! 攻撃のタイミングはこちらで計ります!)


 メイのカウントダウンが始まった。

 シュウゴは中央のヒュドラへ迫り、スラストブリッツを確実に当てられる位置へ移動する。ニアも飛び上がり右端のヒュドラの頭上へ。デュラは既に地を蹴り、ヒュドラの額に乗っていた。


(――2、)


 その一瞬、シュウゴは不審なことに気付いた。自分の狙いである中央のヒュドラが、シュウゴのことを捉えブレスを溜めておきながら、首を横へ向けたのだ。デュラが乗っているヒュドラの方へ。

 

(――1、)


 デュラが一足先にランスを突き刺す。彼だけはバーニングシューターの射出という二段階の攻撃があるからだ。

 そしてシュウゴがヒュドラの狙いに気付いたときには既に遅かった。


(――今ですっ!!)

 

「デュラ、避けろぉぉぉっ!」


 シュウゴが必死に叫びながら電撃の斬撃を放つ。それは頭の側面から当たりはしたが、コアの破壊に成功。だが既にその口からブレスは放たれていた。

 ニアのレーザーも、キュベレェの光の矢もすべてヒュドラへ直撃し、コアを破壊したがデュラだけは届かなかった。

 ヒュドラは、デュラの二段目の一撃を阻止するために、猛毒ブレスをもう一つの頭から放ったのだ。 

 デュラはやむを得ず、ヒュドラ頭から跳んで回避。それが正解だ。

 どちらにせよそのままランスを射出する寸前でブレスに溶かされるのは必然だった。


(そん、な……)


 メイの絶望の呟きが耳に入る。

 しかしシュウゴは諦めない。

 ブレスはヒュドラ自身の額を溶かしていた。死の一撃を回避するためにやったのだ。ブレスではコアまで溶かすことはないという的確な判断。

 ならば――


「――うおぉぉぉぉぉっ!」


 シュウゴは他の八つのコアが修復を始める前にと、瞬時にヒュドラへ肉薄し、その爛れた額に大剣を突き刺した。

 ブレスで溶けているだけあって深く入る。


 ――グヲォォォォォンツ


「どうだ!?」


 シュウゴは後ろへ跳んで様子を見る。ヒュドラは体を激しくうねらせ、やがて倒れた。

 間に合ったかと思った。ほんの一瞬だけ――


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