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絶望漂う幽霊船

 港に辿り着くまでもなく、遠目でもその恐ろしい全貌が見えた。

 漆黒の巨大な船が、蜃気楼のように揺らめきながら、カムラの浜辺の目の前に停まっていたのだ。その周囲には青色の炎が揺らめき、まさしく幽霊船。霧がかかったかのようにその船体はおぼろげで、まるでホログラムや残像のように実体が掴めない。

 しかし、それが放つ絶望感と圧倒的な存在感は、山のようでもある。

 シュウゴとデュラは全速力で駆け抜け、すぐに浜辺まで辿りつく。

 以前襲来した触手のせいで灯台や柵が壊れているため、浜辺のそこら中に破片が落ち、戦場跡のようになっている。

 そんな中、討伐隊の騎士や魔術師たちがそこら中で火花を散らしていた。

 上空には、剣を手にした上半身、片腕だけの骸骨(がいこつ)や、幽霊のように半透明な人型の霊体が浮遊し、不規則な軌道で地上へと飛来する。


「――シュウゴ!」


 シュウゴを呼び止めたのは、最前線で他の隊長と共に指揮をしているクロロだった。

 シュウゴとデュラは、急いで彼の元へ駆け寄る。


「クロロさん、これは一体……」


「俺にもよく分からん! 連絡を受けて来てみれば、この不気味な船があったんだ。今はとにかく、奴らの襲撃を防ぐので精一杯だ。あんたらも力を貸してくれ!」


「はい!」


 シュウゴが頷くと、デュラは腰に装着していたバーニングシューターとサンダーガードを展開する。

 そして彼は、地上で戦う討伐隊の援護をシュウゴから指示されると、疾風のように駆け出した。


「奴らは、一体何者なんだ……」


 シュウゴが眉間にしわを寄せ呟く。

 骸骨の上半身は、頭からせいぜい胸までであり、そのほとんどが隻腕(せきわん)である。その手には剣を握り、自由自在に空中を浮遊しながら騎士へ斬りかかっていた。霊体の方は、骸骨の数倍のスピードで飛び回り、魔術師を翻弄している。しかし魔法は効くようで、炎魔法が直撃すると一瞬燃え上がり消滅する。

 シュウゴが敵の行動パターンを分析していると、ニアが上空から大剣とバーニアを引っ提げて降りてきた。


「はいどうぞ~」


「サンキュー、ニア。よし、俺たちも戦おう!」


 シュウゴはバーニアを噴かし、ニアは翼を羽ばたかせ飛び上がる。


「うおぉぉぉ!」


 シュウゴは上空の骸骨へ瞬く間に接近すると、ブリッツバスターで力一杯袈裟切りにする。

 すると骸骨は、呆気なくバラバラになり地上へ落ちて行った。


「カタカタカタ――」


 不気味に歯を鳴らせ、骸骨たちが次から次へとシュウゴへ飛来する。

 シュウゴはあくまで冷静に、肘とブーツのバーニアを駆使して立ち回る。


「このぉ!」


 いくら不規則とはいえ、連携もとらずただ剣を振りまわしてくるだけの雑魚など、シュウゴの敵ではない。

 今度は左右から、霊体が猛スピードで飛来する。


「――くっ!」


 しかし、シュウゴは右へ瞬発噴射し避ける。

 真正面から回って来た霊体は、タイミングを見計らい、アイスシールドを展開すると凍り付いた。


 ――ガシャンッ!


 凍結した霊体を大剣で叩き割り、氷結の欠片に変える。

 ニアも空を縦横無尽に飛び回り骸骨を駆逐していく。デュラも地上で上手く立ち回ることで、討伐隊も形勢を立て直した。


「よし! このまま守り切れ!」


 クロロの号令で、カムラ勢力は一気に畳みかける。


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