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17年、生きてきて今日初めて分かったこと

ーー人は皆、“止まない雨はない”と知っている。

でも、その雨がいつ止むのかは知らない。打ち付ける雨に息が出来なくて、苦しくて涙が頬を伝っても雲の止み間から光が射し込むその時を誰も知らない。



その瞬間、俺は唐突に理解した。


人によってはまだ17年、またある人によってはもう17年と言うだろう人生の中でようやく至ったその結論。なんで、もっと早く気づかなかったんだろうと俺は自問自答する。そう考えて震えた吐息を吐き出して顔を歪める。


“認めたくなかったんだよ……”


幼い頃からこの場所で生きてきて、ここ以外で生きる術を知らないからこそ、その事実から目を反らしていた。


そう……


生まれてこの方、物心つく前から属してきた暗殺組織の構成員でありながら……


まさかの“暗殺者に向いていない”というその真実。


だが今日はっきりとその事実を痛感した。


“……な、何だ!……い……まのは!敵対組織か!”


耳につけたインカムから聞こえるノイズ混じりの言葉に詰めていた息を吐き出す。構えたライフルスコープ越しに見える現場の混乱した状況に自身の犯した失態が様々と突きつけられる。許されれるならその場に土下座して滑り込みたいぐらいだ。


「やっちゃったな……」


騒然とする現場を他所に柔らかい声音がビルの屋上に響き渡る。


「あー、所長にまたどやされる」


そう言いながら光の反射から目を守るためにつけていたゴーグルを外した少年は所在なさげに眉毛を下げて肩も落とす。身長168センチ。中肉中背。色素が薄く茶色に見える瞳と髪を持ち、“しゅん“とした雰囲気はどこか庇護欲を掻き立てる。犬に例えたら“ちわわ”のような少年ー古坂唯ーは騒然する現場を前に肩を落とす。本当になんで自分はこんなに“射撃”や“暗殺技術”が苦手なのだろうか。外を歩いていたら何もない所でつまづくぐらいに自分には運動神経がない。


「また……始末書だな……」


“はぁ……”と深いため息が溢れるのを止めらない。今日だって本当は同じ支社のメンバーの逃走を助けるための援護射撃が俺の役目だった。決算月のこの時期、暗殺組織は駆け込み客で大盛況。腕のある暗殺者達は引っ張りだこだ。依頼があればあるだけ受けるそんな暗殺組織では稼ぎ時のこの時期に“苦手だから出来ません”の言い訳は通じない。何より、少子高齢化のこの時代。どこの支社も人手不足なのだ。


「……ほんと……神様、これはないよ……」


空を仰いで自分の“暗殺技術のセンス”のなさを唯は嘆く。


「ゼロ距離しか暗殺出来ない暗殺者なんて使い道ないのに!!」


聞くものが誰もいない高層ビルの屋上に涙目の唯の絶叫が響き渡る。ちなみに失敗を許されない依頼の時はまるで“通り魔”のように物陰から対象に突進だ。どの仕事にも言えることだが才能がないというのは本当になんて残酷なのだろう。震える指先に握られた銃身は冷たくて、残酷だ。


「はぁぁぁぁ……」


深いため息を吐いて唯は自分の人生を解雇する。親の顔も知らない自分にとって生きてきた年月=暗殺者と言っても過言ではない。なのに今日この日はっきりと自覚した。


ー人にはどれだけ努力しても出来ないことがあるのだとー

いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。


“とりあえず、異世界の労働問題を解決しようと思います”に代わり、新たに新連載を書こうと思います。


色んな作業の合間の投稿になりますが少しでも楽しんで頂ければ幸いです


またこの場をお借りして御礼申し上げます。皆様のおかげで今年は色々と嬉しいことがありました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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