願いごとの限度
街はまだ明るく、平日だというのにたくさんの人であふれていた。
ふとカケルはナナにつぶやく様に尋ねた。
「ショウカンビトって限度があるんだよな」
ナナがきょとんとした顔でカケルを見つめた。
「何の話?」
「願い事だよ。昔にじいちゃんから聞いたんだ。ショウカンビトには叶えられる願いに限度がある。そこが逆に現実的だろう?って」
「ええ。そうよ。何でもかんでも叶えられるわけじゃないの。人を生き返らせるとか。時間を戻すとか。何百人、何千人の人を助けるとか。私たちは魔法使いでもなんでもない。そりゃ願いを叶えるためにはとんでもない力を発揮するんだけど。でも万能じゃない」
ナナは立ち止まった。
カケルは振り返る。
「ナナ?」
「私たちはね、カケル。いざという時に何も役に立たないのよ」
ナナの瞳は潤んでいた。だが、ナナは微笑んでいた。
カケルが口を開きかけたとき、ナナは走り出した。
「家まで競争しましょ!カケル!」
「え、おい!ナナ!」
ナナは、どんどんカケルから離れていく。
何かから逃げているように。
それはきっとリリィと関係している。
カケルはなんとなく、本当になんとなくだがそう思った。




