休日の街へ
休日の駅も平日とはかなり印象が変わる。
いつも通り、階段を下り地下鉄の改札を入る。
そこには、人がまばらに立っているだけ。
ガラガラの電車に乗り、ふた駅あとで下りる。
改札を出ると、リリィは立ち止まり駅を見つめた。
平日の朝とは全く違い、人がほとんどおらず、天井からこぼれる木漏れ日は駅の床に落ちていた。
(休みの日のこの駅は本当に好き)
そんな木漏れ日の中をリリィは歩きだす。
駅を出ると職場とは反対の方向へ。
そこには、ビジネス街でありながら巨大な公園がある。
森のように木が生い茂ったその公園はボールやバット、ラケットを持った子供たちや家族連れで賑わっていた。
そんな人々を横目で見ながら、リリィは公園の中を歩いていく。
少し歩くと大きな広場が見えてきた。
そこにはたくさんのシートの上に骨董品や古書、古着など様々なものが置かれていた。
そんな品物を見下ろしたり、かがんだり、しゃがみこんだりしながらこれまたたくさんの人々が行き来をしていた。
ウォーキンシティでは、休日になるとこうして公園でフリーマーケットが開かれる。
リリィは休みの日にこのフリーマーケットを訪れるのが日課になりつつあった。
(特に何か買うわけでもないし、ほしいものがあるわけでもないけど)
ふと近くにあったアンティークの小物を見つめた。
古い鍵や時計、ネックレス。
このフリーマーケットは骨董品を多く取り扱っているため、アンティークの小物もたくさん出回っている。
そんな小物を見つめるのがリリィは好きだった。
(ただ見ているだけでも十分楽しい)
アンティークを見つめていると不思議な気持になる。
自分がずっと生まれる前から存在するものが長い時間を掛けてこうして目の前にあるのがなんだか不思議で仕方がない。
顔も知らない誰かの物語と繋がっている様な気持ちになる。
とリリィはいつも感じるからだ。
広場をぐるぐると周り、様々なアンティークたちとの出会いに満足したリリィは広場の近くにあったカフェで買ったコーヒーを持ってベンチに座った。
フリーマーケットで賑わう人々を見つめる。
そう。リリィは、人を見るのが好きだった。
アンティークを見つめる時と同じ感覚になるからだ。
生まれも育ちも全く違う。そんな人たちが今、自分の目の前を行き来しているのが不思議で仕方ないのだ。
特にここウォーキンシティには様々な国の人々が集まる。