イアトマ国にて③
「なんでわかったんだ?」
「物乞いの振りよ。私は物乞いの振りをして誰が鈴を渡すにふさわしい人なのか見定めてきた。もともとそれは、サンっていうショウカンビトがしていたことなの。サンは私にとって尊敬するショウカンビトだったから。おじいさんはとても幸運な人ね、サンに出会えたなんて」
「うん。いつも会うたびに言ってたよ。ショウカンビトが私を別世界へ連れて行ってくれたんだって」
ナナの顔が少しほころんだ。
「そう。だからカケルは私がショウカンビトだって信じてくれたのね」
「小さい頃からずっと聞かされていたからな。いつもはどうなんだ?なかなか信じてもらえないだろ?」
「ええ。私なんて物乞いの振りなんてしてるから特にね」
「リリィは?初めは信じてくれなかったのか?」
「さあ、どうだったかな?」
(またこれだ)
そうなのだ。ナナはなぜかリリィの話になるといつも適当な返事をする。
ナナの昔話やほかのショウカンビトの話ならカケルはたくさん聞いたが、なぜかリリィの話はほとんど聞いていなかった。
(話したくないのか?まあ、いいけど)
カケルはリリィがどうしてカケルのために願いごとをしたのか気になって仕方なかったがこの時はウォーキンシティに住むことができる楽しみで頭がいっぱいだった。




