イアトマ国にて
ナナの突拍子もない提案を聞いてからカケルはもういつもの毎日に集中できなくなっていた。
楽しみで、楽しみで、とんでもなく楽しみで仕方がなかったからだ。
もちろん、教室はいつもどおり息を殺して過ごしていた。
だが、何か楽しみが待っていると辛い毎日をいつもどおり過ごしているのにまるで夢の中にいるようなそんな気分になるものだ。
とにかくカケルはウォーキンシティに向かうまでの一ヶ月間、いつぶりかわからないくらいに学校を辛いと感じなかった。
学校の長期休暇は一ヶ月と少し。
生まれてから一度も旅行したことがなかったカケルは一ヶ月も外国で、しかも世界最大の都市ウォーキンシティで過ごすことができることに現実味をなかなか感じることができなかった。
そんな夢の中にいるような日々の中でカケルとナナは放課後になると、例の廃屋で日が暮れるまでよく喋った。
今までのショウカンビトとしてナナがどんな願いごとを叶えてきたのか、ナナの昔話はとても興味深く面白かった。
なによりも200年もナナが生きていたことにカケルは心臓が止まりそうになるほど驚いた。
「お前、そんなおばあさんだったのか?」
ナナはむっとして目の前に置いていた缶コーヒーを飲み干した。
「ショウカンビトは年も取らない。不老不死、そして不死身の体でもあるのよ」
「じゃあお前はずっとそのままの姿なのか。この先も」