おじいちゃんの言葉
カケルのおじいちゃんのお墓はカケルが住んでいるマンションのすぐ近くにある。
閑静な住宅街の端っこにある墓地はとても静かで穏やかな風がカケルの髪を揺らした。
カケルはしゃがみ込み目を閉じて手を合わせた。
「じいちゃん、俺の前にも遂にショウカンビトが現れたよ」
そう言ってカケルはすっと目を開けて墓石を見つめた。
「でも、俺には判断がつかないんだ、そいつはもしかしたら冗談でそんなことを言っているだけかもしれないし」
答えは返ってくるはずがない。
そんなことカケルもわかっている、だからこうしてカケルはここに来て想像するのだ。
おじいちゃんはなんて答えてくれるだろうかと。
(じいちゃんならきっと)
”カケル。君は、信じるのが怖くなってしまったんだね。昔、友達に裏切られた経験から。
確かに人を信じるのは勇気がいることだ。ましてや初めて会った人間なんて。
だからこそ君は人を見定めなけれないけない。
どうやってって?
信じるんだよ、相手の前に自分を。自分の勘をね。
ただ、それだけだ。
それでもし誤った選択をしたならそれを糧に次に活かせばいいだけのこと。
そうやって自分の勘を鋭くしていくんだよ。見定めるだけの能力を身に付けなければ。
大事なのは自分を信じることだけだ”
それはカケルが昔おじいちゃんから聞いた言葉なのかもしれない。
だが、こうして問かけるとカケルの中におじいちゃんの言葉が蘇ってくるのだ。
「人を見定める・・・か」
カケルはふうっと息を吐いた。