例の通学路にて
そのまま学校はいつものように時間が流れていった。
ただ、不安だったのはトーマの代わりが誰になるかということだった。
トーマの代わりは例の転校生ではないかとカケルだけではなくクラスメイトのほぼ全員が思っていた。いや、期待していた。
ついこの前まで、道で物乞いをしていたクラスメイトなどまさにいじめの標的だ。
だが、朝にいじめっ子はナナに話しかけてから一度も話しかけることはなかった。
まるでナナが転校してきたこと自体を忘れているように。
そのため、また別のクラスメイトがいじめの標的とされた。
カケルは申し訳ないと思いながらも自分が標的にならなかったことに安堵していた。
これで明日も同じような日常が送れると。
びくびくしながら生きているというのに、カケルはそう感じていたのだ。
とにかく学校はカケルにとっていつもどおり終わった。
自分が標的にされなかった安堵感からか存在を消しながら教室に存在することをあまり苦に感じなかった。
カケルはいつもの道で帰ることにした。
もうあの例の物乞いはクラスメイトになったのだからあの道を避けなくもいいからだ。
と思っていたが、なんとあの場所にナナは立っていた。