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教室での異変①
クラス全員がナナを見つめていたが、カケルはナナに見つめられている気がしてしょうがなかったため、振り返ることができなかった。
カケルの頭の中であのじっと見つめてきたナナの瞳が蘇った。
(あの時、変に声なんかかけなきゃよかった)
HR中、教室の中はずっとざわついていた。
「ねえあの子」
「ずっとあの道にいた子じゃない?」
そんな言葉が飛び交っている。
カケルの心臓は大きな音を立てていた。
なぜなら、HRが終わるときっとあのナナって子は自分に声を掛けてくる。
そうなったら、面倒だ。とカケルは考えていたからだ。
チャイムがHRの終わりを告げるとカケルは真っ先に教室を出ようと席から立ち上がった。
その時だった。クラスのいじめっこの中心とも言える少年がナナの席へ駆け寄った。
「おい、お前この前までそこでホームレスしてただろ?」
カケルは、斜め後ろを振り返った。
振り返るとカケルはナナと目があった。
(あ。やばい。ここで話しかけられたら)
ナナはじっとカケルの目を見つめた。
もちろんいじめっこがそれを見逃すはずがない。