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ショウカンビト  作者: 十八谷 瑠南
序章 ~リリィのお話~
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ナナの告白①

リリィは、一瞬ぽかんとした顔をしたが、すぐに顔をほころばせて笑いだした。

「ナナ、ふざけるのもいい加減にして。そうやって話を混乱させようとしているのね」

「ふざけてない」

その声は、今まで聞いてきたナナの声の中でも一番低かったためリリィは笑うのをやめた。

「私が屋根を突き破ったのをリリィは見たでしょう?」

「見たけど・・・ショウカンビトなんて昔話じゃない」

「たしかに昔話よ。でも私たちは今こうして存在してる」

「私・・・たち?」

「ショウカンビトはイチからハチまでいるの」

「イチからハチ?」

「1番目のショウカンビトはイチ。2番目のショウカンビトはニイ。名前が数字になっている。私は7番目。ナナ」

「ちょっとまってどうゆうこと?」

「私たちはずっと昔からショウカンビトとして生きている。それもリリィが生まれるずっと前からね」

リリィはまだ現状が飲み込めなかった。

いきなりショウカンビトだと言われ、しかもずっと前から生きていたなんて。

「あのさナナ」

「何?」

「私の生まれるずっと前から生きてたのよね。だったらあんた何歳なのよ」

訳がわからないリリィはナナに思わず意味不明な質問をしていた。

ナナはふふっと微笑みながらそうねと言って答えた。

「いつこの世界に生まれたのかよくわからない。気がついたらショウカンビトとして生きていたからね。でも、記憶があるのはざっと200年くらいかな?」

リリィはその数字に驚きすぎて現実味を持てなかった。

だからこそやはりナナは自分をからかっているんだと思ってしまった。

「リリィ、私のことまだ信じられないわよね。でも、クレイラントの絵を盗んだところを見たあなたなら信じてくれるでしょう?」

確かにナナはあの時、屋根を突き破り空を飛ぶように逃げて行った。

「あれは人間技じゃなかったわ」

「でしょ?」

「じゃあ仮に!まだ信じたわけじゃないけど、仮に、あなたがショウカンビトだとしてなぜクレイラントの絵を盗んだの?」

「簡単よ。私がショウカンビトだから」

「だからそれがわからない」

「だから、願いを叶えたのよ」

リリィは目を見開いてナナを見つめた。

「クレイラントの絵を盗むのが誰かの願いだったの?」

「クレイラントは、昔私が鈴をあげた人だったの。まあ、死んじゃったんだけどね。それで鈴はクレイラントの娘に渡ったの」

「鈴が使えるのはショウカンビトが選んだ人だけじゃないの?」

「選ばれた人間が別の人間に渡してもいいのよ。私たちは私たちが選んだ人間を心の底から信用しているから」

そう言ったナナの目は、いくつもの時代を見てきた目をしているように見えた。

少なくともリリィはそう感じた。

「クレイラントの娘があなたを呼んだのね」

「ええ。それがもう半年前かな」

「そんな前に?」

「クレイラントのあの絵。“夕焼け”はね、クレイラントはどこにも売る気も美術館に寄贈する気もなかった絵なの。なのに、今から60年前にあの絵は盗まれた。でもクレイラント本人は仕方ないって言って結局私に絵を取り戻すようには命じないまま死んでしまった」

リリィは何も言わずナナの言葉に耳を傾けていた。

「でも、クレイラントの娘はねどうしても許せなかった。あの絵を盗んだ奴らが。

だからこうして世界初公開ってなる直前に盗み出し、あいつらが一番驚くやりかたで仕返ししてやろうと思ったらしいわ」

リリィはその話を聞いて少しスカッとした気持になった。

(機会を伺ってたんだ。絵が盗まれた日から。クレイラントの娘なんてもう80はとうに超えているはず)

「ずっとこの日を待っていたのね」

「そういう人なのよ。気が強いおばあちゃんなんだけどね。だから私はクレイラントの絵が公開される半年前にこのウォーキンシティに呼ばれた」

「じゃあ本当は金持ちのところの子供っていうのも全部嘘?」

「うん。そう」

「じゃあ、あの広場の同情作戦はなんなのよ?」

「あれは真似」

「真似?だれの?」

「別のショウカンビトの。ああやって鈴を渡すにふさわしい人を探していたの」

(何番目のショウカンビトか知らないけど変な探しかたするわね。ん?てことは)

「ナナ、あなたも探していたの?」

「ええ。クレイラントの絵がここにくるまで十分時間はあったからね。」

「それで見つかった?」

ナナは笑いだした。

「ナナ、どうしたの?」

「リリィったらあんなに疑っていたのに、もうすっかり信用しているのね」

(あ、本当だ)

「本当ね。私、とっくにナナの話を信用しちゃってるわ」

そう。リリィはすっかり信用・・・というよりも疑うところがなかったという方が言い方が正しいだろう。

誰が聞いてもナナは本当のことを言っているようにしか聞こえなかったのだ。

「リリィだよ」

リリィはゆっくりとナナを見つめた。

「私が鈴を渡すにふさわしいと思ったのはリリィだよ」

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