変わらない教室
きっとカケルが休日を楽しむことを学んだからだろう。
学校は相変わらず苦痛なのだが、前の様な気分の重さはもうなくなっていた。
ナナも相変わらずカケルの斜めうしろの席に座っている。
ナナは全くカケルに話しかけることも見つめることもなかった。
クラスのいじめっ子もナナが初めてこの教室に来た時と変わらずナナのことを全く相手にしていない。
(ナナの奴、馴染み過ぎだろ)
相変わらずといえばこの教室。
先生の声をかき消すほどのうるさい生徒たちの声。
もちろん。授業中も。
休憩中の教室は今でもいじめっ子たち以外は息を殺している。
この変わりようのない教室がカケルは本当に大っきらいだった。
長期休暇にウォーキンシティでの素晴らしい生活を経験していれば尚更。
そんなことを考えていたカケルは教壇に立つ先生を見て首をかしげた。
(あれ?)
HRはいつもクラスの担任が行う。
だが、今、教壇に立っているのは、この学校でも一番厳しいと言われている先生だ。
カケルだけではない。
この教室にいる生徒、おそらくナナ以外どうしてこの先生が教壇に立っているかわかっていた。
(きっとあいつが何かしたんだ)
先生の低い声が教室に響いた。
「昨日、理科室横のトイレでボヤが発生した」
騒がしかった教室はさらにざわついた。
「静かにしろっ!」
先生が教壇を拳で殴りつける。
ドンっと大きな音がして、さすがの教室も静まり返った。
「今から名前を言う奴は廊下に出ろ。それ以外の奴は自習だ」