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おじいちゃんへの報告
カケルは、ウォーキンシティから戻ってきたこの二ヶ月の間の出来事をおじいちゃんのお墓の前で思い出していた。
(相変わらず学校は楽しくないよ。でも、学校だけが全てじゃないってわかったんだ。少し外に出れば楽しいことがたくさんあるって)
カケルは微笑んだ。
その時ふと声が聞こえたような気がした。
”私の言うとおりだっただろう?”
そう聞こえた気がした。
「うん、おじいちゃんの言うとおりショウカンビトは俺の世界を変えてくれたよ」
カケルはおじいちゃんのお墓に優しく触れた。
「おじいちゃんにもナナを紹介したかったな」
カケルはあたりをきょろきょろと見回して叫んだ。
「おい、ナナ!いるんだろ?相変わらず俺を見てるんだろう?少しぐらい出てきたらどうだ」
だが、カケルの声に反応したのは風が揺らした木々の葉の音だけだった。
(まあ、いいや)
「じゃあ、おじいちゃん。また来るよ」
それから、また辺りを見回して叫んだ。
「お前もな、ナナ!また例の廃墟で!」
何も誰も答えなかったが、絶対にナナに聞こえているという確信を持っているカケルは、そのまま歩き出す