懐かしの場所
「ああ、そういえばそんなこと言ったかな」
「俺、この街に来て、ここが平和じゃないなんて思ったことない。そりゃティオクは・・・ていうかイアトマ国は、ど平和だから。ウォーキンシティはそこよりかは危なく感じるけど、でも平和で安全で素敵な街だよ」
ダミアンは悲しそうに微笑んだ。
その表情は昨日のライルの表情と似ていた。
この店に誘った時、ライルも悲しそうに微笑んでいた。
「ありがとう。そう言ってくれて」
「俺、この街が好きだよ。なのに昨日出会った人はみんなこの街から離れて行った人ばかりだった。この街になにか理由があるの?」
「理由があるのは、街じゃない」
「え?」
「懐かしい場所を訪れる時、それは必ずといっていいほど何か理由があるんだ。自分じゃわからない時もあるけどきっとそこには理由があるんだよ。昨日の客にもね。だから、答えを知りたいならその人に聞けばいい」
店を飛び出したカケルのうしろ姿を見てダミアンは、ふうと息を吐いた。
「俺は、ずるいな。答えを知っているくせに」
ダミアンがぼうっと窓の外を眺めると、カケルの走っている姿が見えた。
(あの子の背格好、ちょうどあいつくらいだな)
「あれからお前は来ないな。ナナ」




