再びダミアンの店で
(明日にはナナが帰ってくるな。そうなったらこの店にもきっと来づらくなる。理由はよくわからないけど、ナナはこの店が嫌いみたいだし)
カケルは目の前にあったサンドにかぶりついた。
味は相変わらず美味しかったが、カケルは難しい顔をしていた。
だからだろうかダミアンが心配そうに声を掛けた。
「そのサンド変な味でもした?」
カケルは驚いて、口の中に残っていたサンドを喉の奥に水で流し込むと首を振った。
「ちょっと考えごとしてて」
ダミアンはくすっと笑った。
「朝から考えごとかい?若いのに大変だねえ」
そう言ってカケルのコップに水を注いでくれた。
「あ、ありがとう」
ダミアンはにこっと微笑むとカウンターの奥に戻った。
そう。
今は朝なのだ。
昼時ではない。
カケルはここのサンドがもう一度食べたくて、食べたくて昼が待ちきれず、朝食として食べに来たのだった。
(こんなにうまいのになあ。なんでナナは嫌がるんだろう)
カケルはあたりをきょろきょろと見回した。
朝だからか、ダミアンの店にはカケルしかいなかった。
カケルは席を立つと、カウンターの奥にいるダミアンに声を掛けた。
「あの」
ダミアンは振り返ってカケルに微笑んだ。
「サンドならまだいっぱい作れるけど?」
「ち、ちがうよ!」
カケルは顔を赤くして首を振った。
(絶対食いしん坊だと思われてる)
「君、昨日も来てたよね。そんなに僕のサンド気に入ってくれたの?」
「うん。こんなに美味しいサンド食べたことなくて」
「たしか、旅行でここに来ているんだったっけ?どこの国から?」
「イアトマ国。イアトマ国のティオク」
「へえ!イアトマ国!」
ダミアンは目を見開いて驚いた。
(みんな、イアトマ国って聞いたらすごくびっくりするんだよな)
「この国のほとんど裏側じゃないか。それにとても平和で礼儀正しい国なんだろ?この街と正反対だな。場所だけじゃなくて」
「そのことなんだけど」
「そのこと?」
「昨日言ってたこの街が平和じゃないって」




