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ダミアンの言葉
カケルはダミアンの店を出て、フリーマーケットの会場に向かいながらダミアンの言葉を思い出していた。
(平和じゃないってどういうことだろう。そりゃティオクと比べたら治安は良くないかもしれないけど。俺、この街が危ないなんて思ったことない)
結局あのあと、ダミアンの店はランチタイムに入って忙しくなったため、カケルはダミアンと話をすることができなかったのだった。
(それにしてもサンドめちゃくちゃ美味しかったなあ。なんでナナは美味しくないなんて俺に言ったんだ?あいつ本当に舌がおかしいんじゃないのか?)
カケルはふとナナの言った言葉を思い出した。
“お腹が減るなんて感じたことないわ”
“それに別に味がわからないとかじゃないもの。こうやって食事を楽しむことはできるわ”
(ちがう。ナナは味がわからないような奴じゃない。だとしたら、あの店に行ったらなにかまずいことでもあるのか?)
カケルは立ち止まった。
「リリィのこと?」
カケルは振り返ってダミアンの店を見つめた。
「まさか」
(考えすぎだ)
カケルは視界からダミアンの店を外して再び歩き出す。