再びナナ
「おーいリリィ」
「私は今、空を見て忙しいの」
「空なんか見て何が楽しいのよ」
そう言った声の主は、リリィの隣に座った。
リリィはため息をつくと、視線を隣に移した。
「あんたも暇ね。ナナ」
横に座ったナナは、缶ジュースを飲んでいた。
「リリィと一緒でね」
(全くこの子は)
「リリィも休みの日よくここに来るの?」
「ええ。広場でやってるフリーマーケットを見にね。あんたは?また金儲け?」
「うん。でも今日は微妙だった。ここの街の人たちは冷たいわ」
「ナナってこの街で生まれたんじゃないの?」
ナナはその言葉を聞くとぴたっとジュースを飲むのをやめた。
(あれ?私、なにかおかしなこと聞いたのかしら)
「私なにか」
「親のね、転勤が多くて昔から色んな街を転々としているの」
そういってまたジュースを飲み始めたナナを見てリリィはほっとした。
「そう。じゃああんたは色んな街を知っているのね」
「うん。そりゃもうたくさん。うんざりするほど」
「何言ってんのよ。まだ、中学生くらいの歳のくせして色んな国を渡り歩いてきた言い方しちゃって」
ナナは、ふふっと笑った。
「それもそうね」
なぜかこの時、リリィはナナが自分よりもずっと年上に感じた。
まあ、ほんの一瞬だが。
(気のせいね)
「ねえ、ナナよかったらランチ一緒に食べない?」
ナナの顔が、ぱあっと明るくなった。
「いいわね!ちょうどランチの時間だと思っていたのよ」
「ずっとここにいても休みの日がもったいないし」
(ライルたちを見てたらひとりがちょっと寂しくなっちゃたし)
ふたりはベンチから立ちあがり、ウォーキンシティの中心部へと向かった。