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衝突  作者: ku-ro
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路線変更

 上島は昨日の出来事を忘れようとしたが、なかなか忘れられるものではなかった。しかし今日も昨日と変わらず同じ時間の電車にのった。途中で何か違和感に気づいた。

(あっ、まわりの人は僕のこと…)

ここで誤解だと叫びたい気分だがそんなこと出来るわけがない。黙って下をむいて駅に着くのを待った。ホームに降りエスカレーターの列に並んだ。前が女性だったので右から左の列に移動しようとしたら、女性のほうが先に左の列に並びなおし進んでいった。

(この人も…)

いつも同じ電車の女性だったのでショックだった。たまたま急いでいるのかもしれない。しかし上島には自分を避けていったとしか思われなかった。エスカレーターを降りた。

(この場所で昨日は…)

急に憂鬱になった。

(またあいつに会ってしまったら…)

昨日の女性の怒ったあの恐ろしい顔が頭によぎった。同時にまわりの視線が気になりだした。上島は早足で環状線に向かった。気のせいかもしれないが耐え難い。環状線にのり少し落ちつきを取り戻した。

(なんでこんな思いをしないといけないんだ…、僕は悪くないのに…)

電車の時間を変える。他の交通手段。自転車。上島は頭の中で試行錯誤した。

 天王寺で乗り換えた後は比較的に車内がすいた。携帯で路線図を調べてみた。

(あの駅を通らないでも大学に行ける!)

上島は別の行きかた見つけた。そして頭の中でシュミレーションしてみた。上島の家から次に近い別路線の駅がある。その駅までは自転車で15分程度。高校の時も何度か自転車でいったことがあった。今より5分弱くらいしか変わらないと予測した。難波経由で地下鉄。大学の最寄り駅が2路線あることに今更ながら便利さを知った。

(明日から電車を変えよう)

上島は心に決めた。


 いつもとは反対方向に自転車をこいだ。5月の桜並木は緑が徐々に増えていく途中だった。行動がかわると気持ちも一変したようだった。久しぶりにこの道を通ったような気がする。前まであった複数の店が閉店しているということに寂しさを覚えた。

 上島は駅近くの駐輪場に到着した。腕時計を見たら計算通り5分ぐらい多くかかった。まだ無料の駐輪場として開放していたので運がよかった。駅に着いた上島は料金表を見て切符を買った。

(この方法でいいなら定期を切り替えよう)

上島はホームに入った。まずはここから難波駅まで。混み具合はさほど変わらなかった。定期になれば難波に行きやすくなると若干の期待が持てた。電車は難波に到着した。ここからは地下鉄で大学の最寄り駅へ。上島はあまり難波にきたことがなかったので改札をでてから市営地下鉄の標識を探した。人が多いいというのが上島の率直な思いだった。

 難波駅のホームで電車を待った。歩く距離が増えてしまうと実感した。電車がやってきた。

(うわー、満員や…)

外から分かるぐらいの混雑を間近に見た時上島は躊躇した。

(これにのるのかー)

エスカレーターに乗るときは逆に警戒するようになった。満員電車でも同じである。女性の近くはなるべく避けたくなった。あまり人が信じられなくなり、今まで以上にかまえてしまうようになった。そんな事は他人よって打ち消される。満員電車で女性の隣になってしまい肩が接触、乗り降りする人に押される自分がいた。外を見ても地下鉄なので真っ暗、つり革を握った手に力が入った。駅に着いた時はいつも以上に疲れた。

(今までのほうがらくだ…)

 せっかく見つけたと思った行き方は余計に苦痛に思えた。上島は苛立ちはじめた。いつもより速足で駅から大学まで歩いた。大学に行くのが面倒に思えた。そんな時に後ろからバイクが通りすぎた。

「バイクかー」

思わず声がでた。これなら混雑やエスカレーターにのる必要もなくなる。興味はなかったが今の自分には必要かもしれない。バイクがあれば少し遠くまで行って写真も撮ることができる。

(いいかもしれない…)上島の気分が晴れたような気がした。

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