衝突 4
「アイデア商品を考えたいねん。」
「アイデア商品?」
「うん。生活でこれがあるから助かるみたいな。」
「そうなんだー」
「自分にもっと発想力があったらなーってよく思うよ。」
「了くん、発想力ありそうだけど。」
そう言えば上島がこういう事を話していた。頭の中では上島との思い出がずっと流れていた。
(発想力か…)
親の会社をみて、上島の発言が理解できた。
(了くんもまだまだしたいことがあったはずなのに…)
福寺は上島産業株式会社に電話をかけた。しかしコール音がなるだけで誰もでなかった。
「栄子!ただいまー」
母親が家に帰ってきた。福寺の顔を見て、相当落ち込んで疲れている事が分かった。
「どうだった?」
「うん。」
福寺は答えなかった。それだけで母親は分かった。
「空港に行ったらどう?」
「考えたけど、私が行ったところで了くんが助かるわけでもないから。明日どうするか考える。」
母親は料理の支度を始めた。日は暮れ窓の外が暗くなってきた。18時には父親も家に帰ってきた。家の空気は重たかった。父親もどう慰めたらいいのか分からなかった。
母親が夕食をテーブルに並べたが、福寺は食べる気にならなかった。母親も理解して何も言わなかった。
「お父さん?」
「なに?」
「お父さんの同級生の家と了くんの家は近かった?」
「近かったよ。」
「そうなんだ」
「どうして?」
「なんでもない」
自分を助けてくれる存在だったはずの上島はもういない。
(了くんは死んだんだ…)
すべてをての事を投げ出したくなった。
(もう、嫌だ…)
この苦しみから解放されたかった。
(忘れるしかない…)
そう考えたが、上島の笑っている姿がでてきた。自分にとって上島がなくてはならない存在であると気づいた。失ってから気づいても遅かった。もう上島とは会うことはない。メールもこない。手を繋ぐことさえできない。明日からの日常生活にぽっかり穴があいたようだった。
「食べないで大丈夫?」
「少しは食べたよ。」
母親は福寺の目の前にあった食事を片付けた。
(明日どうしよう…)
仕事に行くか、上島の両親に会いに行くか悩んだ。自分はこんなに苦しんでるのに世間は何事もなくすすんでいくのが辛かった。自分が撮影した写真の中で雲の合間から太陽の光が射し込む写真があった。お気に入りの空の写真だった。今の自分の心にもこの写真のような光が射し込んでほしかった。桜の下で助けてくれたのが上島なら、同じように今の自分を助けてくれる存在は上島しかいなかった。時間がたち悲しみは薄れるかもしれないが、今日の一日は心の深くに刻まれるようだった。
突然家にチャイム音が響いた。
「誰?」
台所にいた母親の声がした。福寺は顔を上げモニターを見た。その人影を見た瞬間、立ち上がり玄関に走った。そして靴をふんだまま外に飛び出した。
「誰がきたの?」
台所から出てきた母親はモニターを見た。二人が抱き合う姿が見えた時、モニターの映像が消えた。




