衝突 2
インターフォンを押して数秒まったが応答はなかった。福寺は門の外から中を見た。いつも上島が乗っているバイクが屋根の下にとめてあった。福寺はもう一度インターフォンを押すが同じだった。
「おらないかー。」
車から出てきた父親が言った。
「うん。そうみたい。」
「上島産業、会社の名前かなー」
「どれ?」
表札の下に上島産業株式会社とかかれたシールが貼ってあってあるのを福寺は確認した。
「了君のお父さん、会社経営してるん?」
「それは言ってなかった。」
父親は携帯で上島産業株式会社を検索した。すると住所と電話番号が出てきた。
「わりと近いなー。」
「行ってもいい?」
福寺は父親の会社に行けば何か分かるかもしれないと期待した。父親はうなずき車に乗った。福寺は上島の家をもう一度見てから車に乗った。いまだに上島の状況が分からなかった。
数分で会社近くに到着した。一体は二階建てや三階建ての鉄筋コンクリートの会社がずらりと並んでいた。その中に上島産業株式会社と書かれた看板を父親は見つけた。
「あったー、ここだ。」
会社前にあるスペースに前方駐車した。車から降りた福寺は看板をみた。看板には社名と、企画開発、デザイン、製造と書かれていた。
ガラスドアを開けて二人は中に入った。すぐに階段があり事務所は二階だと明記してあった。階段をあがると事務所入口があったので、ノックしてドアを開けた。
「すいませーん」
中には作業着をきた40代ぐらいの男性が座っていた。
「あのー少しお聞きしたいのですが。」
男性は立ち上がり入口のカウンターにきた。
「どうしました?」
「上島様はおられます?」
「社長ですか?今日は朝から予定があるみたいで会社にはいません。」
「そうですかー。」
「どういったご用件で?」
「連絡をとりたいのですが?」
「用件があれば私がお聞きしますよ。」
事前に飛行機事故の事は話さないように二人で打合せしていた。従業員には内緒にしている可能性があった。しかし父親はこの従業員に了君の事を話していいか悩んだ。
「奥さんは会社にいますか!!」
福寺が後ろから少し大きめの声で質問した。
「奥さん?」
「はい、社長さんの!!」
「社長の奥さんも一緒に行きましたよ。」
福寺の思っていたとおりだった。父との約束は覚えていた。福寺はカウンターに置いてあったメモとボールペンを手に取った。そして一筆書き従業員に渡した。
「社長か奥さんにこの番号に連絡してほしいって頼んでもらっていいですか?」
福寺は従業員にお願いした。
「わかりました。」
従業員はメモを受け取った。そして二人は頭を下げて事務所をでていった。従業員はメモ紙を見た。きれいな文字で名前と電話番号が書かれていた。
(何の営業だろう…)
福寺の父親がスーツ姿だったので営業だと勘違いした。こっちから社長に連絡することはないと思い、メモを自分の机に置いた。
福寺たちは車に乗った。結局何も進展することがなかった。
「どうする?空港に行くか?」
「いい。帰る。」
福寺は上島の両親から連絡がくることを願った。
「そしたら、仕事に戻っていいかな。」
「うん。近くの駅で降ろしてもらったら電車で帰るよ。わざわざありがとう。」
力がいっぺんに抜けた。何も考えることなく外を眺めていた。道路沿いは桜が綺麗に咲いていた。きた道を戻っていたが、車は交差点を曲がった。そして路地を走りだした。
「どうしたの?」
「ここに同級生がすんでんねん。」
「そうなんだ。」
「あったー。いてるかなー。」
「寄ってもいいよ。」
ゆっくり家の前を通るが不在のように父親はかんじた。
「たぶん、仕事やろ。」
何もなかったように車は速度を少し上げた。
「高校の同級生?」
「うん。もう何年も会ってないないけどなー」
福寺の目に公園がうつった。その公園には桜の木が何本もあり、全部綺麗に咲いていた。
「あれっ?」
福寺の記憶の中に見覚えがあった。
「この公園見たことあるかも。」
「この公園?」
「うん。」
「そういえば昔、栄子を連れて同級生の家に遊びに行ったことあるかも」
「私、ここでボールなくした嫌な思い出がある。」
すぐに車は公園前を通りすぎた。福寺の記憶に今も鮮明に残っている廃墟は確認できなかった。
「そんな事あったっけ?」
「ボールは見つかったからお父さんは知らないよ。」
車はもときた道に再び戻った。しばらくすると駅に着いた。
「ここでいい?」
「うん。」
「ここからだと乗り換え一回で家に帰れるから。」
「大丈夫。分かってるよ。」
そう言うと福寺は車から降りた。車はそのまま方向転換することなく走り去って行った。




