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衝突  作者: ku-ro
38/41

衝突 1

電話をきると福寺は更衣室に走った。ロッカーを開け、携帯を取り出した。着信履歴を見ると母親からの電話が2回あった。インターネットでニュースを調べると、さっき母親から説明を受けた内容がかかれていた。福寺は声に出してニュースを読んだ。

「飛行機同士が衝突…。中国行き…多数の死者あり…。了くんが乗る飛行機だ。」

すぐに上島の携帯を呼んだ。

「こちらは……電源が入ってないか電波の届かない…」

朝はコール音が鳴っていた事を福寺は覚えていた。事故で携帯が壊れたかも知れないとさとった。

(了くん…)

あきらかに状況は厳しいと確信した。更衣室を飛び出した福寺は上司の元にむかった。さすがに働く気にはならなかった。事情を説明してとにかく家に帰ることにした。帰り道も携帯に連絡するがコール音はならなかった。朝送ったメールには既読がまだついていなかった。

(まだメール見てないんだ…)

電車に乗り座席に座った。

(どうして了くんがこんな事になるの…)

福寺の足が震えた。

(了くんの両親なら今の状況がわかるかもしれない。)

家の電話番号を聞いておけばよかったと悔やんだ。空港に行っても肉親ではないので相手にされないかもしれない。自分にできる事を考えた。

(了くんの家に行けば、どちらかの両親がいるかもしれない。どうやって行こう…)

父親の顔が頭にうかんだ。電車を降りた福寺は父親に電話した。母親から事故の事は伝わっていた。父親に上島の家まで車で連れて行ってもらえないか頼んでみた。昼以降なら何とか帰ることができると父親は答えた。福寺はお願いっと頼み、電話をきった。

家に帰ると母親はパートに行っていた。静まりかえったリビングを通り、自分の部屋にむかった。引き出しに入れていた上島の年賀状を手に取った。天保山の観覧車内から撮影された景色がプリントアウトされ「今年もよろしく」と手書きで書かれていた。住所をインターネットの地図で確認した。そして自分の家からたどってみた。

(すこし遠い…)

やはり父親の助けが必要だと思った。時間は11時になろうとしていた。一階におりた福寺はテレビをつけた。情報番組はすべてこの事が放送されていた。安否が放送されないか見続けたが、事故原因についての見解がほとんどだった。離陸間際の飛行機に別の飛行機が側面から衝突。この衝突した飛行機の行動について謎が深まった。パイロットのミスは考えられない。テロ、ハイジャック、遠隔操作など原因究明には時間がかかると専門家が話していた。

(了くんは私を助けてくれる人ではなかったの…)

ただ上島が生きている事を祈った。一昨日に会うことが出来ないと断ったのが最後のやりとりだった。昨日は家に来てくれたのに外出していた。誤解を招いているかもしれないと朝から気になっていた。このままの状態ですべてが終わってしまう事は自分には耐えがたかった。しばらくテレビを見ていたが新たな情報はなかった。福寺はテレビを消した。携帯で撮ったツーショットの写真を開けた。初めての彼氏だった。優しさと笑顔だけが印象的だった。もう会えなくなると思うと涙がでてきた。静まり帰った部屋で時間が過ぎようとしていた。おそらく父の帰りは13時ぐらいだろうと思った。とにかく待つしかなかった。すると玄関を叩く音がした。

「了くん?」

福寺は玄関に急いで行った。誰か確認しないでドアを開けるとスーツを着た父親が立っていた。

「お父さん、早かったね!!」

「ああ、会社の車で帰って来たから。了くんから連絡は?」

「まだない」

「そうか…。とにかく了くんの家に行こう」

福寺は財布や携帯を鞄に詰め込み外に出た。家の前にはエンジンがかかった白い商用車が止まっていた。福寺は助手席に座り、父親に上島の住所を教えた。父親はカーナビに住所を打ち込んだ。

「ああそのへんなんだー。だいたい分かるよ」

そういうと車は上島の家に走り出した。

「会社の車でいいの?」

「会社には許可もらってきてるから大丈夫。」

福寺はナビを見た。まだ上島の家は地図上に示されていなかった。カーナビには道案内の地図とテレビが切り替わりながら映っていた。幹線道路を通り八尾にむかった。山がかなり接近して見える景色に変わってきた。ナビに上島の家が表示された時、川沿いの道路にでた。

「あっ、桜だ。」

満開に咲いた桜並木の道をカーナビは案内した。

(了くんはここで桜の写真を撮っているんだ。)

「もうすぐかな。」

父親がそういうと、福寺は緊張しだした。上島の安否、そして初めて上島の家に行く事がそうさせた。ナビに従い父親は住宅街を運転した。

「家ばかりだね。」

「ああ。一軒一軒が大きいなー」

福寺はナビを見た。上島の家はもうすぐそこだった。

「ここだ。」

父親は車を止めた。福寺は父親の見ている方向をみた。白を基調とした一軒家だった。自分の家より大きくて、新しいことはすぐに分かった。すこし大きめの黒い表札に「上島」と白地で名前が彫られていた。福寺は車からおりすぐにインターフォンを押した。

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