空港 2
空港には7時15分についた。上島は速足で搭乗口に向かった。一人で搭乗手続きをしたことがなかったので、若干の不安と焦りがそうさせた。
コンビニがあったので上島はペットボトルのお茶と飴などのお菓子を数点買った。そしてレジ袋を手に取り、スーツケースを転がしながら再び歩き出した。チェックインカウンター前に到着した上島は酔い止めを飲む為ベンチに座った。携帯を後ろポケットに入れていたので壊れないように取り出した。両サイドには外国人が座っていたので腕にかけていたレジ袋の中に入れた。そしてボディーバッグから箱に入った酔い止めを取り出し1錠飲んだ。
「旅行ですか?」
隣に座っていた50歳ぐらいの中国人男性が上島に話しかけてきた。
「はい。」
「どこ行きますか?」
「万里の長城とか…」
「ああ、いいとこですよ。」
とてもにこやかに話す姿に上島は好感が持てた。上島は持っていたペットボトルのお茶をスーツケースの上に置いた。
「日本語上手ですね。」
「いえいえ、まだまだです。」
「旅行で日本にきたのですか?」
今度は上島から聞き返した。
「はい。7日間いました。」
「楽しかったですか?」
「はい。」
中国人は笑顔でうなずいた。日本語で話していると中国人の妻と中学生の娘がトイレから帰ってきた。すると夫婦での会話が始まった。上島は全く何を言ってるのか分からなかった。最後に男性は上島に挨拶をして、たくさんの荷物をかかえながらチェックインカウンターにいった。
(同じ飛行機なんだ…)
上島は中身の入ったレジ袋と酔い止めをスーツケース外側のポケットに入れた。そしてお茶をボディーバッグに入れ、パスポート、旅行券を代わりに取り出した。
(さあ行こう…。)
上島もチェックインカウンターに向かった。審査はすんなり終わり、スーツケースを預けた。ボディーバッグだけになり、かなり身軽になった。さっき話した中国人家族もベンチに座り、和やかに話している姿があった。上島もベンチに座った。
(後は飛行機にのるだけだ…)
一人での旅行は初めてだった。ここまできてやっと落ち着いたような気がした。
(そうだ、栄子さんに)
上島は携帯をだそうとした。しかし鞄、ポケットを探すが見つからなかった。
(あれっ?どこや)
もう一度探すが同じだった。
(落とした?)
自分の行動をよく考えた。
(スーツケースかも)
上島は確信した。搭乗まで時間があったので上島は福寺と連絡がとりたかった。
(今は電車に乗ってる時間かな…)
着いたらすぐに連絡しようと心に決めた。
一週間福寺と会わないだけで寂しさがわいた。友達がおらない自分にとって福寺は大きな存在だった。
(むこうに着いたらすぐ連絡しよう…)
携帯がないので一眼レフを首にかけ、窓から見える景色や離発着する飛行機を何度も撮影した。
(よくこんなん発明したよなー)
上島は人間の発想力に感心した。いよいよ搭乗するとなると、事故が起こりそうな気がした。テレビなどで見る再現VTRが頭によぎった。
(大丈夫、大丈夫。)
世界中で常に飛行機が飛んでいるのに航空事故はめったに起こらない。飛行機に乗る人は少なからずこういう思いを片隅に抱くものだといいきかせた。自分は座っているだけで何もすることはできない。飛行機の安全性を信じ上島は搭乗した。
修学旅行以来の飛行機。独特の空間を思い出した。指定された席に座り、離陸を待った。酸素マスクなどの説明を聞いているうちに、飛行機は滑走路に向かって動きだした。上島は丸い窓から外を眺めた。現地で万里の長城や兵馬俑が見れると思うと楽しくなってきた。何もかも順調だった。ゆっくり進みながら飛行機は滑走路に入った。そして轟音とともに急加速を始めた。ものすごい速さで動いているのが体に伝わった。
(いよいよ飛ぶぞ…。)
上島がそう思った時、ガガン!っと何かが衝突したような音がした。同時に飛行機が大きく揺れ、外を見ていた上島の目にまっすぐに伸びた滑走路と飛行機が一瞬見えた。バランスを失った飛行機が進行方向から左に大きくそれた。恐ろしいほどの揺れと衝撃が上島をおそった。肘掛けを強く握り、歯を食いしばった。何も考える余裕はなかった。上島が座っていた右側全体が数秒浮き上がった。さっきまでの衝撃が一瞬おさまった時に上島は窓をみた。その目には空が見えた。それはとても綺麗な青だった。




